「こんなはずじゃなかった..」と、退職金の運用で後悔する人は少なくありません。今回ご紹介するのは、銀行員に勧められるまま退職金の半分を使って外貨建て保険に加入した、田中栄太郎さん(仮名)の事例。人生100年時代に備えて資産形成をしたいと思った田中さんに、いったい何が起きたのでしょうか。シニア世代の資産運用の落とし穴とそれを避ける方法を、大手銀行に長年勤務した経験を持つFPの青山創星氏が詳しく説明します。
後悔しかありません…退職金1,000万円で銀行員に勧められるがまま「外貨建て保険」を契約した65歳・元会社員の悲惨な末路【FPの助言】
外貨建て保険の注意点と退職金運用のポイント
このように、相手が銀行員だからとお勧めされるがままに保険の契約をしてしまうと、大きな落とし穴にハマってしまう場合があります。
大切なのは、仕組みを理解できないものに大金を投じないこと。商品の仕組みをしっかり理解して、保険は本来の役割である予測不可能な事故や損害を補償するものに限定して使うということ。また、投資には、保険よりも投資信託やETF、国債などの中から透明性が高く、手数料の安い商品を選ぶことをお勧めします。
また、今回の田中さんのケースの場合、慌てて解約せずに待つことができれば100万円も損をすることはなかったでしょう。あのとき銀行員が田中さんに「今解約すると大幅にマイナスになるので、解約はお勧めできません」と言ったことは嘘ではないので、銀行員を信用できなくてもFPなどお金のプロに相談すれば、資産減を避けられたかもしれません。
そして、それ以前に、退職時に夫婦二人分の生活費があれば、パートナーの生活費を保険で残す必要性はそう多くはありません。長い老後のためにお金を増やしたいと考える気持ちはもっともですが、リスクやストレスを抱えて運用する必要が本当にあるのかということを、慎重に考えたほうがよいでしょう。
【外貨建て保険の注意点】
- 元本確保は外貨ベースでのみ
- 払出時に円高なら元本割れのリスク
- 中途解約時は外貨ベースでも元本割れの可能性あり
- コストがとても割高
- 保険の機能は限定的
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【投資について】
- 退職金の運用は慎重に検討し、商品の仕組みやリスクを十分に理解することが重要。
- 外貨建て保険などの複雑な商品は、為替リスク・金利リスクや高額な手数料などの落とし穴が潜むことを認識する。
- 銀行員などの説明を鵜呑みにせず、独立したファイナンシャルプランナーなど、第三者の意見を求めることも大切。
- 保険は本来の役割「予測不可能な事故や損害の補償」に限定して使用し、投資には投資専用の商品を検討する。
- 投資する場合は、投資専用商品の中から透明性が高く手数料の安い商品を選ぶことが賢明。
- 人生100年時代の資産運用は重要だが、理解できる範囲のものに留め、投資しないというのも一つの選択肢。
投資の神様ウォーレン・バフェット氏の「リスクとは、自分が何をやっているかよくわからない時に起こるものです」というのは身に染みる言葉です。
田中さんの経験は、多くの定年退職者が直面する可能性のある問題を浮き彫りにしています。慎重さと知識、そして適切なアドバイスの重要性を忘れずに、それぞれの人生に合った最適な資産運用の道を探っていくことが大切です。
青山 創星
ファイナンシャルプランナー