物価高や低い賃金など、ひとり親家庭を悩ませる経済的な障壁。このような格差は、単にお金だけではなく「体験格差」にもつながります。低所得世帯の深刻な実態について、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、シングルマザーの藤原さん(仮名)のケースをみていきましょう。
給与は月7万円、公営住宅で暮らすシングルマザー「ショックでした」…サッカー好きの息子がポロッと口にした“現実的なひと言” (※写真はイメージです/PIXTA)

息子も感じている“格差”

―毎月の収入と出費はどのようになっていますか。

 

仕事の給料が多くて7万円ぐらいですかね。それと、児童扶養手当とか子ども関連の手当があるんですが、毎月振り込まれるわけではなくて、ゼロの月が年に何回かあるんですよね。その月は給料でやるしかないです。手当が入る月に国民健康保険とかをまとめて払ったりしています。今年の夏休みは本当に暑くて、エアコンを使わざるを得ないというのが本当に大変でした。光熱費が高くなっていて。

 

出費は毎月10万円いかないくらいです。食費、光熱費、あとWi-Fiですね。学校でタブレットが支給されるんですけど、Wi-Fiが使えないとダメなので。公営住宅で家賃の減免申請をしているので、家賃は1万円ぐらいです。団地の周りだと5万円ぐらいはすると思うので、今の家賃はとても助かっています。

 

―お子さんは今どんなことに関心を持たれていそうですか。

 

社会科がすごく好きなんです。ほかの科目は全部普通なんですけど、社会だけずば抜けて成績が良くて。YouTubeで色々な国のことを紹介するアニメみたいなのをたくさん見ています。

 

去年、カタールでサッカーのワールドカップがあったじゃないですか。それを見て、色んな国のユニフォームを覚えたりもしていましたね。

 

―サッカーは自分でするのも好きですか。

 

するのも好きです。でも、サッカーを習いたいかどうかという話をしたときに、「習い事をするのはちょっと無理なんじゃない?」みたいなことをポロッと言っていて、うちの経済的なことを考えてるのかなと思いました。「うちは高校は行けたとしても大学は無理だろうね」と言われたこともあって、ショックでした。そんなことを考えてるんだなと思って、悲しくなりました。

 

団地に住んでるのをすごく気にしてるみたいです。近くに大きいタワーマンションができたりして、そこに引っ越してきた同じクラスの子たちとはやっぱり違うよね、みたいな。中学受験する子もいるので、自分のうちとは違うと感じているのかもしれません。

 

インタビュイーのプライバシーに配慮して名前は仮名とし、一部の情報に加工を施している。

 

 

今井 悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン
代表理事