物価高や低い賃金など、ひとり親家庭を悩ませる経済的な障壁。このような格差は、単にお金だけではなく「体験格差」にもつながります。低所得世帯の深刻な実態について、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、シングルマザーの藤原さん(仮名)のケースをみていきましょう。
給与は月7万円、公営住宅で暮らすシングルマザー「ショックでした」…サッカー好きの息子がポロッと口にした“現実的なひと言” (※写真はイメージです/PIXTA)

時給は最低賃金…休みづらい環境に息苦しさも

―去年始められたお仕事について聞かせてください。

 

スーパーで品出しとか案内の仕事をしています。週3回、朝から夕方頃まで。時給は最低賃金ですね。1年働いてもまったく上がっていません。

 

私は品出しみたいな淡々と作業するような仕事が向いていると思っていて、この仕事も好きなのでなんとか続けられているんですけど、周りの人はどんどん辞めていきます。「ブラックだね」みたいなこともよく言われます。

 

いつもギリギリの人数でやっている感じなので、休みづらいです。一応シフト制なんですけど、ほぼ固定です。調整も難しくて。子どもに何かあったときにもスッと休めない。

 

私が抜けちゃうとほかの人に迷惑がかかるし、自分が休んだ穴を埋める人からのプレッシャーをすごく感じます。それくらい人が足りてない。みんなでイライラして、というのをすごく感じます。

 

―職場は女性が多いですか。

 

店長と副店長は男性で、現場はほぼ女性です。長く働いてる現場の人もいるんですけど、私が休んだ後に「あのとき大変だったんだよね」みたいに言われたりもします。「ですよね、すみません」みたいな。

 

自分もちょっとネガティブな性格なので、そういうふうに言われちゃうと……。子どもは体もあまり強いほうではなくて、学校も休みがちなんですけど、「風邪はひかないで」、「ひくなら週末ね」と言うぐらいで。ロボットじゃないので無理なんですけどね。だから、平日にちょっと咳とかすると怖いなって。

 

―現在の仕事を週3回にしている理由とも関わりますか。

 

私の体の限度もあります。今のお店で働いていると週3回だけでヘトヘトになるんです、本当に。重いものを運んだりしますし、そもそもの仕事量もすごくて。どんどん品出しをしないと店内がスカスカになっちゃうので。家に帰るといつもクタクタで、「あれもできなかった、これもできなかった」みたいなことばかりを考えている1年でした。

 

私が職場を変えたらもっと家でニコニコできるんじゃないかなと思います。働き始めたことで収入面は前より安定してきたかなとは思いつつ、やっぱり仕事のイライラをおうちに持って帰ってしまうんですよね。「今日、仕事でこうだったんだよね」みたいな愚痴を子どもに言ったりとか。そういうのはなくしたいなと思います。