(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成を加速させる方法としてスタンダードになりつつある副業。しかし、公務員の場合、その選択肢は狭い。端から諦めていたなか、「公務員こそ不動産投資」という謳い文句を目にしたというある夫婦。公務員でも副業として不動産投資ができるのか、公務員が不動産投資をする際の注意点とは?

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副業禁止の公務員は「不動産投資」もNGなのか?

「公務員だけど副業をしたい!」

 

そういう声を最近多く聞くようになりました。日本経済の長期間の低迷、公的年金への不安、減っていく退職金……公務員も会社員と同様に家計の先行きが見通せず、常に不安を抱えている状態です。

 

毎月の限られた給料だけでは、生活費に使うと投資に回す余裕は多くありません。特につみたてNISAなどの金融投資は「タネ銭」が多い人ほどリターンが大きくなるゲームです。投資にあまりお金を回せない状況では当然リターンは少なく、老後の不安を解消できるほどの収益を得ることができません。

 

そこで多くの人が考えるのは「収入を増やすこと=副業」です。しかし、公務員の副業は原則禁止であることは当然ご存じでしょう。「国家公務員法」と「地方公務員法」では、「営利目的での務め、または私企業の経営」を禁止しています。

 

「じゃあ副業なんてダメか……」と諦めてしまいがちですが、実は公務員といえども副業が絶対禁止というわけではないのです。

 

屁理屈をいうようですが、副業と副収入は異なるものです。公務員であっても、もし実家がコメ農家で稲刈りを手伝いに帰省して両親からお小遣いをもらったら、それは副業に当たるのでしょうか。また、自宅の屋根に設置した6kWの太陽光発電設備によって売電収入を得たら、それは副業でしょうか。実はこれらは副業にあたらないということが法律に明記されています。

 

そもそも国家公務員法では次のような定めとなっています。

 

国家公務員法(第103条)私企業からの隔離職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

 

この「営利企業」という部分が副業をするうえで引っかかるわけですが、営利企業の定義は「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」において明記されています。

 

第1項関係

(中略)

一 農業、牧畜、酪農、果樹栽培、養鶏等 大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される場合

二 不動産又は駐車場の賃貸 次のいずれかに該当する場合

(1)不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合

イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が5棟以上であること。

ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については、貸与することができる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること。

(中略)

(3)不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額500万円以上である場合

(中略)

三 太陽光電気(太陽光発電設備を用いて太陽光を変換して得られる電気をいう。以下同じ。)の販売 販売に係る太陽光発電設備の定格出力が10キロワット以上である場

(兼業がみとめられるのは)

(2)入居者の募集、賃貸料の集金、不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。

 

わかりやすくいうと、農家自体を経営するのはNG、太陽光発電設備については10kW以上NGということ。ここで注目すべきは不動産投資の場合です。

 

・5棟10室以内・収入は500万円以下

・物件を自分で管理せず業者に任せること

 

保有する物件の規模と管理方法の条件を守れば、公務員であっても不動産投資ができるのです。この定めに驚く人も多いようです。

 

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老後に不安を覚える「公務員夫婦」…不動産投資に前向きになるまで

ここで、ある公務員の事例をご紹介します。

 

【事例】

家族構成:

・夫Tさん…40歳/国家公務員/年収700万円

・妻Mさん…43歳/地方公務員(看護師)/年収900万円

・子ども…2人

預貯金:4,500万円

住まい:妻Mさんの父が所有する戸建て

 

TさんとMさんはどちらも公務員として勤務する夫婦です。いわゆるW公務員世帯として年収は1,500万円。子ども2人を育てていくには十分な収入であるといえます。

 

住宅は妻Mさんの父親が所有する築35年の戸建てです。もともとは妻Mさんの祖父が購入した建物でした。祖父が亡くなったため、それまで住んでいた公務員宿舎から引っ越したのです。父親からこの建物を相続する旨を伝えられているため、当面この家に住むつもりです。住宅ローンを借りずに済んでいる点も恵まれているといえます。

 

数年前から看護師長となった妻Mさんの年収は、夫Tさんよりもはるかに多い900万円。職場での評価が高い妻Mさんは50歳までには看護部長となるはずですが、実は最近、退職を考えているのです。

 

コロナ禍での激務とストレス、そして年齢的なものなのか、このところ体調が優れません。もし家計の収支が許すのであれば転職し、クリニックなどで夜勤のない勤務をしたいと思っています。そうなると年収は300万円程度になるでしょう。または専業主婦でもいいと考えています。

 

妻Mさんの意向に対して夫Tさんは賛成するものの、一抹の不安があります。住宅ローンがないとはいえ、子ども2人の大学進学が控えています。大学は東京都内の私立大学を想定しています。預貯金は4,500万円と十分ですが、これを大学資金で使い切ってしまうと老後資金が不足するかもしれません。

 

「投資だけで老後資金が貯まるのだろうか……」

 

FPに相談すると、妻Mさんが専業主婦となった場合、老齢年金が大きく減ること、預貯金が貯まりにくくなること、投資に回せるお金はごくわずかであること、築35年の自宅の大規模リフォームが待っていることなどから、老後資金が2,700万円ほど不足するという計算結果となりました。

 

つみたてNISAなどの金融投資による収益にもよりますが、そのほかに毎年最低でも50万円は副収入が必要という計算です。50万円ならば妻にパートでもしてほしいといいたいところですが。

 

「体調の心配があるのでMさんには一度仕事を辞めさせてあげたいですよね」とFP。そこでFPが勧めたのは「副業」。もし年間手取り50万円程度を副業によって稼ぐことができたら、老後資金の不足分を埋めることができます。公務員の副業なので管理はすべて不動産投資会社に任せることができれば問題はありません。

 

家賃収入を年間500万円以下にしなければならず、かつ年間50万円の収益を目指さなければならない点は比較的厳しい条件であるため、信頼できる不動産投資会社にプランニングしてもらう必要があります。 「もし公務員でもできるのであれば、一度不動産運用会社から説明を聞いてみたい」と夫Tさん。前向きに不動産投資を検討しはじめています。

 

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不動産投資には公務員が有利であるわけ

不動産投資は公務員・会社員が最も有利な投資といわれています。その理由は不動産投資ローンを金融機関から借りる際の「信用力」です。毎月、毎年、確実に収入が入り続ける公務員と会社員は、金融機関から見て安全な融資先なのです。

 

不動産投資は基本的に金融機関からそっぽを向かれるとスタートにさえ立てません。その点、公務員は金融機関が最も融資をしたい個人客ということになります。

 

また、不動産投資は金融投資と比較してミドルリスクの投資です。株式投資のように、ある日突然「億り人」になるような夢物語はありませんが、土地と建物という現物に投資する手法であるため、経営計画がずさんでない限り、破綻リスクは低いといわれます。

 

毎月の家賃収入というインカムゲイン、最終的には土地と建物を売却することで得られるキャピタルゲインと、収益を得るタイミングがあります。立地戦略、入居者を選ぶマーケティング、いつ売却するかの出口戦略など、専門的な知識を持った不動産運用会社をパートナーに選ぶことができたら、想像よりも安全な投資となるでしょう。

 

公務員の不動産投資は自分で管理することができないため、不動産運用会社に「丸投げ」となってしまうケースがあります。しかしリスクをすべて自分が抱える以上、事業計画を綿密に立案する必要が。不動産運用会社は慎重に選びましょう。

 

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