複雑怪奇な年金制度。そのなかのひとつが「年金の繰下げ受給」です。年金が増額となるというメリットばかりに注目が集まり、デメリットがわかるとすると非難ごうごう……そんなケースが後を絶ちません。
年金の繰下げなんてするんじゃなかった…「年金月7.7万円増額」でニッコリの〈71歳元サラリーマン〉、助言をくれた友人を恨まずにはいられなかったワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

年金が増えるなんて「絶対にお得」といっていたが

田中靖男さん(71歳・仮名)。「友人に八つ当たりされてまいった」といいます。その友人というのが、同年代のAさん。先日、胃がんの手術を行い、退院をしたとAさんの奥さんから連絡を受けたので、お見舞がてら旧友と共に自宅に訪問したといいます。

 

そのとき、「お前のアドバイスを聞いてヒドイ目にあった」「繰下げなんてするもんじゃない」といわれたとか。

 

繰下げというのは、年金の繰下げ受給のこと。老齢年金は基本的に65歳からの受給ですが、希望すれば60~75歳の好きなタイミングで受給開始ができます。

 

60~64歳と、65歳より早く受け取るのが「繰上げ受給」。1ヵ月受給開始を早めるごとに0.5%ずつ減額となり、最大30%の減額となります。

 

一方、66~75歳と、65歳よりも遅く受け取るのが「繰下げ受給」で、1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ増額となり、最大84.0%の増額となります。

 

大手企業の総務畑にいた田中さん。65歳で会社を去り、年金受給を開始していました。一方でAさんが働く会社では雇用延長で70歳まで働き続けることができたとか。そこでAさんは、年金をいつ受け取るか悩んでいたそうです。

 

――絶対こうすべきとアドバイスをしたわけではなく、「自分なら仕事を完全に辞めてから年金を受け取るかな、繰下げ受給で年金は増えるし」とさらりといっただけなんですが……

 

Aさんは「繰下げ受給? なんだそれは」と食いついてきたとか。そこでインターネットで「年金の繰下げ受給」について検索。一緒にみながら、年金が増額になる仕組みを見ていったといいます。

 

――それで「年金が増えるなら、絶対繰り下げたほうがいいな」といって。70歳で会社を辞めてから年金を受け取り始めたらしいのですが……

 

会社を辞めたあと、胃がんが見つかりました。初めての大病だったらしく「大騒ぎだった」とAさんの奥さんは振り返ります。