医師は比較的所得水準が高いですが、日々の診療や研究などにより、節税対策や資産形成について後回しにしている人も多いでしょう。しかし、所得水準が高い医師こそ適切な節税方法を取り入れることで、税負担軽減や、将来の資産形成への大きな効果を得ることができます。本コラムでは、医師が手軽に取り組める節税方法や長期的な資産形成に役立つ手法について詳しく解説します。限られた時間の中で最大限の効果を得るために、ぜひ参考にしてください。

医師が取り組める基本的な節税対策

(画像:PIXTA)
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前述した通り、医師として働く方々は高収入であるため、効果的な節税対策を取ることが重要です。以下では、医師が取り組める基本的な節税対策について詳しく説明します。

 

・一般的な控除を活用する
・特定支出控除を活用する
・iDeCoの活用

 

一般的な控除を活用する

医師に限らず利用できる一般的な控除として、主に以下が挙げられます。利用できるにもかかわらず見落としているものがないか確認しましょう。

扶養控除や生命保険料控除、医療費控除、住宅ローン控除などは一般的に利用している方が多いです。なかでも最も基本的な節税対策としては、基礎控除と給与所得控除が挙げられます。

 

基礎控除とは、年末調整や確定申告で合計所得金額から差し引くことができる控除です。控除額は最高48万円で、合計所得が2,400万円超になると段階的に控除額が引き下げられ、2,500万円を超えると控除額は0円になります。確定申告を行う必要がない場合、一般的に基礎控除は自動的に適用されるため、特別な手続きは必要ありません。

 

給与所得控除とは、給与所得に応じて一定額が控除される仕組みのことです。医師の中でも給料を受け取っている勤務医が対象になります。控除額は55万円から195万円で、こちらも一般的に年末調整では自動的に適用されますが、給与所得控除を最大限活用するためには、自身の給与収入に応じた控除額を正確に把握し、必要に応じて確定申告で追加の経費を申告する方法もあります。

 

例えば、実際の経費が給与所得控除額を上回る場合、「特定支出控除」を利用して追加の控除を受けることでさらに税負担を軽減できる場合があります。以下では、特定支出控除について解説します。

 

特定支出控除を活用する

医師は職務上の経費が発生しているケースも多いため、一般的な控除だけでなく、特定支出控除も活用することで、適切に税負担を削減する効果が期待できます。対象となる主な支出は以下の通りです。

 

・通勤費
・転勤費
・研修費
・資格取得費
・図書費
・衣服費
・交際費

 

これらを業務のために使用した場合、自ら確定申告することで控除を受けられます。ただし、対象になるのは特定支出が給与所得控除の2分の1を超えた場合で、その超えた部分を給与収入から控除することができます。

 

計算式:給与収入-給与所得控除額-(特定支出の合計額-給与所得控除額×1/2 )

 

なお、業務に直接必要な経費だということを明確にするため、「給与所得者の特定支出に関する証明書」を病院など勤め先の担当者に渡し、記入をしてもらったうえで確定申告書に添付する必要があります。

 

iDeCoの活用

iDeCoとは、個人が自らの老後資金を積み立てるための私的年金制度です。加入者は毎月任意の掛金を積み立て、その資金を自ら選んだ金融商品で運用し、原則60歳以降に受け取ることができます。

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)では、掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税を軽減できます。また、iDeCoは運用益も非課税で、60歳以降に受け取る際も退職所得控除や公的年金等控除が適用されるのもメリットです。

 

掛金は最低月5,000円からで、開業医の拠出限度額は月6万8,000円、勤務医の拠出限度額は月2万3,000円(企業年金に加入していない場合)です。

 

金融商品は大きく2種類で、「元本確保型」として定期預金や保険があります。こちらは元本が保障されますが、大きく資産を増やすことは期待できません。もう一つの「価格変動型」には投資信託があります。こちらは元本の保障はありませんが、運用状況によっては資産が大きく増える可能性もあります。

 

つまり、iDeCoには掛金の所得控除、運用益の非課税、受取時の控除という3つの税メリットがあり、節税しながら資産形成をすることが可能なのです。

 

2024年からスタートし注目を集めている新NISAと混同しがちですが、様々な点で違いがあります。iDeCoと新NISAはどちらも運用益が非課税になりますが、前述の通り、iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となり、受け取りの際にも退職所得控除や公的年金等控除の対象となります。そのためiDeCoのほうが、より節税効果が大きくなるという違いがあります。

 

【もっと対策したい方向け】節税・資産形成の方法を解説

医師としてさらに効率的な節税や資産形成を目指す方に向けて、以下の2つの方法を解説します。それぞれ特有のメリットと注意点があるため、しっかりと理解した上で実践することが重要です。

 

・不動産投資
・医療法人の設立

 

不動産投資

医師や弁護士など所得水準が高い方にとって、不動産投資は節税効果と資産形成を両立できる方法として人気があります。不動産投資における節税の主な手段は、減価償却です。減価償却とは、建物の価値が時間とともに減少することを考慮し、その減少分を費用として計上することで課税所得を減らす方法です。

 

また、不動産投資は相続時にも節税効果が見られます。相続税は、現金で相続するよりも不動産で相続したほうが課税評価額は下がります。

 

節税以外にも、不動産投資には長期的に副収入を得ることができたり、レバレッジ効果が期待できたりするなど様々なメリットがあります。また、管理会社に管理を委託することによって、日々の物件管理の負担を軽減することができます。

 

しかし、忙しいことを理由に不動産会社の指示のままに投資を始めるのは避けるべきです。不動産投資には、空室リスクや家賃滞納リスクなどのデメリットも存在するので、しっかりと知識を蓄えてから行うべきです。

 

そのため、多忙な医師であってもしっかりとこれらのリスクを把握した上で、自分自身で物件や市場の状況を検証し、納得のいく判断をすることが重要です。

不動産投資について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

 

【関連記事】不動産投資の初心者必読!基礎知識や失敗事例から学ぶべきポイントを解説

 

医療法人の設立

開業医(個人事業主)が医療法人を設立することで、節税効果が得られる可能性があります。まず、クリニックを経営する個人事業主が医療法人になると、給与所得控除を受けられるようになります。

 

また、所得税や住民税も軽減されます。これは法人化した会社の収入は法人税率が適用されるためです。法人税は税率が最大で23.2%なのに対して、個人の所得税は累進課税制度により最大45%と、法人に適用される税率のほうが低く、収入が多いほど法人化することで得られる節税メリットは大きくなります。

 

さらに、医療法人としての事業に係る費用は損金として計上できるため、経費として認められる範囲が広がり、節税が期待できます。
しかしながら、法人の設立や運営にはコストや手間がかかるなど、デメリットも存在するため、慎重に検討することが必要です。

 

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