内科医の橋本将吉氏は著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』で血管がいかに老化対策に必要かを説いています。一体どうしてでしょうか? その理由を著書から説明します。
糖があなたのおなかの脂肪に変わるまで
では、もう1つの中性脂肪についてです。甘いものを食べたら太るといわれて、おなかについたぷにぷにの脂肪と、砂糖などの糖質がどうも結びつかないという方がいらっしゃるかもしれません。そんな方のために、少し説明しておきます。
人は、糖質をメインに、脂質、タンパク質などから体を動かすエネルギーをつくりだしています。このエネルギーが余ったとき、インスリンというホルモンなどの働きによって、いつかエネルギー不足が起きたときのために、中性脂肪という形に変えて、細胞に貯蔵します。いわば、中性脂肪は、蓄電池のような存在です。
甘いものを食べて脂肪がつくのは、このような理屈からです。そして、この中性脂肪をためる場所が皮膚の下であれば、皮下脂肪、内臓であれば、内臓脂肪というわけです。中性脂肪が、どう血管に悪さをするのかは、あとでわかりやすく、詳しくご説明します。
ここでは、中性脂肪が増えると、LDLコレステロールが増加しやすくなるという簡単な説明にとどめておきます。中性脂肪は空腹時で150mg/dl以上、非空腹時で175mg/dl以上だと、基準値を超えています。最後は血糖検査。これは血液中を流れるブドウ糖の量を測っています。ブドウ糖は人間に必要なエネルギー源ですが、多いと血流を悪くしたり血管を傷つけたりします。
通常、食前は約70〜100mg/dlの範囲で推移しています。空腹時の血糖が126mg/dl以上、食事をとったあとに測った血糖が200mg/dl以上だと危険信号だと考えてください。まとめると、上の血圧の値が140mg/dl以上、悪玉コレステロールが140mg/dl以上、空腹時で、中性脂肪が150mg/dl以上、血糖が126mg/dl以上だと血管もマズい状態にあるかもしれないということです。
家に健康診断票がある方はぜひ、見直してみてほしいですし、今は一部の薬局などで、そんなに時間をかけずに、簡易的に測ることができるようになっています。インターネットで、「ゆびさきセルフ測定室ナビ」で調べてみれば、測定内容や測定できる薬局が見つかるはずです。
1つ注意しておきたいのが、血圧や血糖値、中性脂肪が高かったり、高血圧や糖尿病などと診断されたりした人たちのことを「どうせ欲望の赴くままに食べていたんでしょ?」とか「我慢がきかない人なのね」という偏見を持ってはいけないということです。
人の顔がまったく違うように、体の中身だって千差万別。生活習慣に気を配っていても、体質的に、それらの値が上がりやすい人もいるからです。遺伝が大きく関係していることも、最近明らかになってきました。医学や医療の世界には、誰も悪くないというのはよくあることです。
また、ご自身の数値が高くても「俺はダメだ」「こんな性格だから仕方ない」などと言ってあきらめないでください。大切なのは、あきらめずに少しずつ気をつけ、改善していくことなのです。
橋本将吉
内科医