内科医の橋本将吉氏は著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』で血管がいかに老化対策に必要かを説いています。一体どうしてでしょうか? その理由を著書から説明します。
コレステロールってどんなものか、今、ぱっと頭に浮かびますか?
次は血中脂質検査について説明します。字面のごとく、血中に漂う脂質を測る検査です。主に測るのは、皆さんもよく耳にする言葉ではないでしょうか。コレステロールと中性脂肪です。人間は、ものを食べると、胃などで分解、消化、吸収し、いらないものを排泄します。
さてこの吸収したものは、どこにいくでしょう。ここまで、読んできた方はわかりますね。そう、血管です。血管に入ります(正しくはリンパ管ですが、リンパ管に入って胸管というところを通り、最終的には鎖骨下静脈で血管に入ります)。血管には、糖をはじめ、アミノ酸(タンパク質)、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素といわれるものが溶けて流れています。
そして、例えば糖は脳に運ばれて、脳を働かせるエネルギーになったり、アミノ酸は筋肉をつくるのに使われたりするわけです。さて、まずは血液中のコレステロールについて説明していきます。コレステロールは、食事によって直接取り込まれるのが2割程度。そのほかは、肝臓や小腸で、脂や糖などからつくられているのです。
このコレステロールは、血中では、LDLコレステロール=通称・悪玉コレステロールとHDLコレステロール=通称・善玉コレステロールの2種類が存在します。ここで、ギットギトの背脂たっぷりのラーメンを想像してみてください。なんだかドロドロしていますよね。さらに言えば、血液の約90%は水分です。
性格が合わずに、いがみあっている人たちのことを水と油と言いますが、この2つは混ざらないイメージはありませんか? ドロドロしていて、なおかつ、水と混ざらない。なんだか、血液の中で、流れにくそうに感じますよね。そう、実際のところ脂は、血液の中で流れにくいんです。
そこで、コレステロールなどの多くの脂は、流れやすいように、肝臓で周りにタンパク質をくっつけ、水に溶けて血中を流れやすい形になっています。これがLDLコレステロールであり、HDLコレステロールです。LDLとHDLの最後のLの文字は、リポタンパクを表しています。そして、リポとは脂肪の意味。つまり脂肪のくっついたタンパク質というわけです。
LDLコレステロールが増えるか、HDLコレステロールが増えるのかは、摂取した脂の種類などによって決まります。最近、アマニ油が、油なのにもかかわらず体にいいと話題になりましたが、これはアマニ油が善玉のHDLコレステロールを増やしやすい油というわけです。そして、詳しくはあとで説明しますが、悪玉コレステロールという名が示す通り、LDLコレステロールは、血管を悪くする親玉のような存在で、増えると動脈硬化の原因になります。
一方で、HDLコレステロールは、そのLDLコレステロールが血管に悪さをするのを抑制させる役割があるので、善玉といわれているわけです。しかし、単純にLDLコレステロールが悪の親玉だから、絶対に成敗するべき対象なのかといえば、そうではありません。
細胞の機能を維持するために役立ったり、体に重要なホルモンやビタミンD などを合成するのにも役立ったりしているのです。役立っているからこそ、形を変えてまで血管の中を漂っているわけです。ただし、増えすぎると血管に悪さをしてしまう。つまり、増えすぎないことが重要なのです。
ですので、健康診断では、特にLDLの値に注意してください。LDLコレステロールが140mg/dl以上の場合は、高LDLコレステロール血症とされており、いわゆる危険警報が鳴らされている状態です。120〜139mg/dlの場合も境界域高LDLコレステロール血症といわれ、いわば注意報といったところでしょうか。
先ほど、LDLコレステロールは体にも役立つと説明した通り、59mg/dl以下だと少なすぎて、これも注意が必要な状態です。また、HDLコレステロールは、40mg/dl未満だと低HDLコレステロール血症とされていますので、これも注意が必要な状態です。