子どもを頭ごなしに叱っていては、本人は社会に適応する力が身についていきません。目の前の問題を解決しながら、子どもの成長につながる声かけのコツをみていきましょう。英国の心理療法士、フィリッパ・ペリー氏による著書『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(日経BP 日本経済新聞出版・刊、高山真由美氏・訳)より、詳しく解説します。
ストレス耐性、柔軟性、問題解決力…子どもの“社会適応スキル”を育むために親がやるべき「部屋を片付けて」と叱るよりもっと大切なこと   (※画像はイメージです/PIXTA)

重要なのは歩み寄りの経験

子どもがどう感じているかを突きとめたら、問題を見直します。

 

「部屋が散らかっているから片づけなさい。片づけないなら、おもちゃを全部捨てるよ」などと言ってはいけません。これでは子どもを侮辱し、脅しているのと同じで、憤りが鬱積するだけです。そうではなく、共感を示しましょう。

 

練習が必要ですし、直感に反するかもしれませんが、子どもは自分の感情を考慮してもらった経験から他者の感情を思いやることを学ぶのです。意見を出しあって一緒に解決策を探すときは、子どもに主導権を与え、何を提案してきても即座にはねつけたりしないこと。もしかしたらこんなふうに言ってくるかもしれません。

 

「子ども部屋はあのままにしておいてもいいんじゃない?」。

 

あなたは少し考えてからこう答えます。

 

「そうだね、それも1つの考えだね。それで解決ならあなたはうれしいかもしれない。だけど、私はそれでは困る。居心地が悪いだけじゃなくて、掃除をするのも大変だし、洗濯が済んだ服を片づけるのも一苦労だから。どうしたらいいと思う?」

 

「わかんない」

 

「急がないから、ゆっくり考えて」

 

あなたがなんでも解決してしまわないことが肝心です。子どもの力を奪ってしまうからです。

 

「いま、おもちゃをしまうことならできるけど、それが終わったら一休みして、そのあと服を片づけるときは手伝ってくれない? たたむのが難しいから」

 

「オーケイ、それならいいよ。服をたたむときになったら呼んで。一緒にやってみよう」

 

などと声をかけましょう。もしあなた自身が権威主義的なやり方で育てられ、それが理想的だと思っているなら、この「協力する方法」はずいぶんまわりくどく思えるかもしれません。しかしここで重要なのは、部屋が片づくと同時に、親子が思っていることをオープンに話しあうことによって、2人の関係に気を配り、歩み寄りつつ問題を解決する方法を学んでいる点です。

 

子育ての本当の仕事は部屋を片づけることではなく、子どものそばで成長の手助けをすることです。協力する方法は、社会に適応するために不可欠なスキル―ストレスに耐える力、柔軟性、問題解決能力、共感力(エンパシー)―を育む助けになるのです。

 

 

フィリッパ・ペリー

心理療法士