年齢を重ねると長時間眠れなくなる

眠れなくなるのは健常な変化 過度な心配は必要なし!

高齢者は一般的に、早寝早起きになる傾向があります。中途覚醒が増え、睡眠時間も短くなり、脳波を測定してみると、特にレム睡眠と深睡眠の量が減少します。若い頃よりも長く眠り続けられていないことを不安に思うかもしれませんが、これらの変化は健常な加齢の過程なので、心配することはありません。

一方で、「若い頃はよく眠れたのに、なぜ眠れなくなったのだろう?」と過剰に気にしてしまうと、睡眠への不安となり、不眠の症状につながります。そのため、不眠を訴える人は年齢とともに増加する傾向がありますが、自然なこととして受け入れることが大切です。

中年以降は朝型になっていく

10代~30代前半までは体内時計が夜型になりますが、40代を迎える頃には朝型のリズムに戻ります。その後、年齢を重ねるにつれてますます朝型の傾向が強くなり、同時に睡眠時間は短くなっていきます。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋

高齢者は長時間眠り続けられない

加齢に伴い深いノンレム睡眠やレム睡眠が減るため、浅い睡眠が増え、物音や光などといった少しの刺激で起きてしまう傾向があります。さらに、身体的な痛みや不快感、排尿の頻度の増加などが睡眠を妨げる要因となることも。

出典 厚生労働省e-ヘルスネットより作成
[図表2]高齢者の睡眠の特徴 出典 厚生労働省e-ヘルスネットより作成

高齢者が夜中起きてしまうのは自然なこと

寝ようと思ってもなかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたりしますが、それは加齢による自然な変化です。過度に心配すると不眠症の原因となるので、自然なこととして受け止めましょう。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋

柳沢 正史
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授
株式会社S’UIMIN代表取締役
医学博士

筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了後、31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター及びハワードヒューズ医学研究所にて24年間にわたり研究室を主宰。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。2012年より、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構を創設。2017年、筑波大学発のスタートアップベンチャー企業「S'UIMIN」を起業。2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。