障害者のきょうだいを持つケースは珍しくありません。こうした障害者は通常、親が面倒をみることになりますが、「親亡き後」はどうなるでしょうか? 本記事では、高橋恵子さん(仮名)の事例とともに、親亡き後の問題について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
「お姉ちゃんのために、あなたを産んだ」…障害のある50歳長女に、4,000万円と不動産を準備した元公務員の両親。父亡き後、病で死にかける母へ震えながら放たれた「次女のひと言」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母の残酷な言葉

現在、母親は入院しています。優子さん1人では、自分の収入はもとより、ほかの財産などの管理ができるとは到底思えません。母親は、日に日に重くなる自身の病状に「優子1人だったら、そのうちに生活費がなくなってしまう日が訪れたかもしれない」と、姉のことが気がかりでたまりません。「あなたを産んでよかった」母親は恵子さんの手を握りました。

 

たまらず恵子さんは「わたしはわたしの人生を生きたかった。どうしてお姉ちゃんに縛られなくてはならないの。お母さんの『産んでよかった』はふつうの母親が言う意味とは違う」泣きながら母親の手を振り払い、病室をあとにしました。

障害者の親亡き後に備えられる制度

優子さんの両親は、優子さんのために資産をなるべく多く残そうと考えていました。優子さんには恵子さんがいますが、将来本人が管理できない場合は、あらかじめ管理方法を検討しておく必要があります。障害者の親が亡くなったときに備える財産管理の方法を紹介します。

 

家族信託

親が亡くなったあとに頼ることのできる親族などがいる場合に活用できる可能性があります。親族などに財産を託しておき、その財産から障害のある子どものためにお金を使ってもらう約束をし、財産が残った場合は、お世話になった親族や施設に渡すこともできます。家族信託のほかに、信託銀行などに財産を管理してもらうことも可能です。

 

成年後見制度(法定後見)

判断力が不十分な方が生活をする際に「成年後見人」によって財産管理や契約行為などの法的な支援を行う制度です。家庭裁判所に後見人等の選任の申し立てを行い、家庭裁判所が決定し開始します。原則として本人が亡くなるまで継続し、報酬の支払いが発生するので、事前に確認しておくことが重要です。障害者が行った契約をあとから成年後見人が取り消すことができます。