老後資金の中心となる老齢年金。できるだけ多くもらいたいと誰もが思うもの。そこで「(65歳での受取り開始と比べて)最大84%増額」と、魅力的な文言で「年金の繰下げ受給」が推されています。しかし、そこにはルールがあり、年金の繰下げ受給ができない場合があるといいます。
年金事務所「年金の繰下げはできません」…月収22万円・67歳の会社員女性「理不尽だ!」と憤慨も「年金ルール」にぐうの音も出ない (※写真はイメージです/PIXTA)

日本の公的年金は「1人1年金」が原則

年金が増えるものと思い、年金の受給開始時期を遅らせていた京子さん。それなのに年金の繰下げができないとは、どういうことなのか?

 

――そんな、理不尽な……年金の受取りを遅らせたら、最大84%の増額になるって書いてあったじゃないですか!

 

「ねんきん定期便にも書いてあった」と主張する京子さん。しかし、

 

――ただ、そこに注意書きで「遺族年金や障害年金を受け取ることができる場合には、老齢年金の受給開始時期を遅らせることができないことがあります」と書いてあります。清水さんの場合、それに該当します。

 

京子さんは、20年ほど前に夫を亡くし、遺族厚生年金を受け取っていました。65歳前に遺族厚生年金の受給権がある場合は、老齢年金の繰下げができないルールなのです。

 

――なぜ、そんな大事なことが、こんな小さな注意書きで……

ねんきん定期便で繰下げ受給のことを知り、受取り時期を遅らせることを決めたという京子さん。納得がいきません。しかし、さらに説明を聞き、納得せざるを得ない気持ちになったといいます。

 

そもそも公的年金は、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つがあり、1つの年金を選択する必要があります。また基礎年金に厚生年金が上乗せして支払われる制度設計なので、「老齢基礎年金と老齢厚生年金」「障害基礎年金と障害厚生年金」「遺族基礎年金と遺族厚生年金」は1つの年金とみなされ、合わせて受け取ることができます。ただ基本的に「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」をまたがって受給はできない、というのが原則なのです。

 

ただ65歳以上で老齢厚生年金と遺族厚生年金を受ける権利がある場合、自身の老齢厚生年金を受け取ることになりますが、遺族厚生年金が老齢厚生年金より高い場合、その差額を受け取れるという特例があります。京子さんの場合、月15万円の老齢年金に加えて、月2万円の遺族年金がもらえることが分かりました。さらにここでは詳細は触れませんが、京子さんの場合、特別支給の老齢厚生年金についても……。

 

年金の原則を教わり、さらに「特例として毎月2万円がもらえますよ」と知った京子さん。

 

――ここまで説明されたら、ぐうの音も出ません

 

受取額は想定よりも少ないものでしたが、京子さんの年金生活はスタートしたといいます。

 

[参照]

日本年金機構『老齢年金の請求手続き』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』

日本年金機構『年金の併給または選択』