5月の社会保障審議会年金部会では、2023年9月や2024年1月に続いて、国民年金の第3号被保険者制度が議論された。ニッセイ基礎研究所の中島邦夫氏が、制度の仕組みや廃止した場合の影響、廃止以外の方策を解説する。
専業主婦が国民年金保険料を納める制度に変えると、低所得者が不利に!? (写真はイメージです/PIXTA)

廃止以外の方策:政府は厚生年金の適用拡大を掲げるが…

前述の例は第3号被保険者に収入がない場合だが、実際には第3号被保険者の約半数が就労している。この場合は、保険料の対象にならない収入が存在する点で、共働き世帯より有利になる。

 

これを改善する方策として、政府は厚生年金の適用拡大を進めている。第3号被保険者の要件を満たしていても、厚生年金の要件を満たしていれば、厚生年金の加入者となるためである。

 

しかし、第3号被保険者から厚生年金加入者になると、保険料を負担する必要が生じる。保険料の半額は事業主が負担し、将来に厚生年金を受け取れるとは言え、目先の負担を気にするのは行動経済学でも明らかな人間の心理傾向である。

 

個人がこのような傾向に流されないよう公的年金制度は強制加入となっているが、お節介のありがたみに気付くのは老後になってからかもしれない。