ニュースで流れる災害や戦争に関する報道に心を痛めて、涙が止まらなくなったり、眠れなくなったりと、心身に不調をきたす人も少なくありません。ショックを受けすぎる自分を守る対策はあるのでしょうか? そこで本記事では、精神科医の西脇俊二氏の著書『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方 』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、事例別に解決策を紹介。第5回目のテーマは「小さなキッカケから“過度な不安”を感じる原因・対策」についてです。
遠い場所の悲しいことに心を支配される
災害や戦争の報道にショックを受け、心を痛める。これは誰にでも起こる、自然な反応です。しかしときどき、それを「自分のこと」のように感じ取りすぎて、涙が止まらなくなったり、眠れなくなったりと、心身に不調をきたす人がいます。近年、痛ましい事件を告げるネット記事の末尾には、心のケアを行う機関の連絡先が記されていますね。それも、「影響を受けすぎる人」の多さを物語るものと言えます。
なぜ、自分の身に起こったことではないのに、そこまで激しく感情移入をするのでしょうか? 実は、その情報自体は、きっかけに過ぎません。
もともとその人の中に強い不安があり、ストレスが限界まで来ていたのです。報道が、その限界を超える「最後の一押し」だったのです。
こう言うと、影響を受けすぎる方や過去にその経験のある方は、「そうじゃない」と、違和感を覚えるかもしれません。こうした方々はしばしば、「自分のことはいいんです、人が苦しむのを見るのがつらいんです」と語ります。たしかに、実感としてはそうなのでしょう。ではなぜ、自分より人の苦しみに目が向くのでしょう?
少し、厳しいことを言わなくてはなりません。あなたがもしそう感じているなら、それは自分の持つ強烈な不安を直視しないためです。
「他者」に原因を置いていれば、内なる不安と向き合い、自分を変え、乗り越えていくという「仕事」をしなくて済むからです。この指摘はとくに、受け入れるには時間がかかるだろうと思います。無理に呑み下さなくて良いので、少しずつ、考えてみてほしいと思います。
並行して、ショックを受けすぎる自分を守る対策をしましょう。まずは、情報に無防備に身をさらさないようにします。 スマホでネット記事をどこまでも追っていると気づいたら、その時点でストップ。すぐに止まれないなら、ひとまず自覚するだけでOKです。「自分はショックを受けやすいから、一言一句、熱心に読まないようにしよう」と思うだけでも、かなり受け取り方が違ってきます。
視覚情報には、とくに注意します。 繰り返し流れてくる被災地や紛争地の映像。そこから受ける影響は、文字情報よりもはるかに強いものです。疲れが溜まっているときなどは、テレビやYouTubeなどの動画媒体は、できる限り避けましょう。