ニュースで流れる災害や戦争に関する報道に心を痛めて、涙が止まらなくなったり、眠れなくなったりと、心身に不調をきたす人も少なくありません。ショックを受けすぎる自分を守る対策はあるのでしょうか? そこで本記事では、精神科医の西脇俊二氏の著書『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方 』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、事例別に解決策を紹介。第5回目のテーマは「小さなキッカケから“過度な不安”を感じる原因・対策」についてです。
不安を和らげる「簡単な方法」とは
医学的な話になりますが、自閉症の人が示す状態に「突発風景理論」というものがあります。原則的に、人間の脳には、ショッキングな情報がダイレクトに入らないようにする自衛機構が働いています。
「扁桃体」という、ネガティブ感情を生み出す部位をガードするしくみのおかげで、つらい情報もある程度マイルドになった状態で受け取れるのです。しかし自閉症の人はその機構が弱いため、突発的に飛び込んできた情報に対して激しく動揺し、感情を爆発させてしまいます。
報道にショックを受けすぎる方々も、レベルは違えど、扁桃体が安定的に働いていない=過活動の傾向があると思われます。 それは、扁桃体の活動を抑制する「前頭葉」や「海馬」の働きが落ちているからだと考えられます。
不安を恒常的に抱えていると、前頭葉と海馬は萎縮しやすくなり、その結果、さらに情報が突き刺さるように入ってくる、という悪循環が起こります。
この悪循環を止め、不安を和らげる、非常に簡単な方法があります。それは、20分間の「早歩き」を、週に2回以上行うことです。 これを半年から1年続けると、前頭葉と海馬が活性化することがわかっています。
どのくらいのペースが「早歩き」にあたるかは人によって違いますが、「少し脈が上がる程度」 を意識すればOKです。これは、軽い有酸素運動です。有酸素運動はβ-エンドルフィンの分泌を促すため、リラックス感と解放感を覚える効果があります。
つまり「ランニング」でも同じ効果があるわけですが、運動好きな人でないと、少しハードルが高いですね。その点、「歩く」は毎日していることであり、そのペースを少し速めるだけなので、日ごろの生活の延長線上でできます。朝、駅までの道を10分、早歩き。帰りも10分、早歩き。そんな日を週に2回以上作ればいいのです。
不安な時期が長く続いた人ほど、回復には時間がかかります。ですから、始めるのは早ければ早いほど良いですが、焦る必要はありません。
ともかく気楽に、1年くらいかけるつもりで実践してみてください。