5人に1人が該当すると言われている、繊細すぎたり敏感すぎたりする傾向を持つ「HSP(Highly Sensitive Person)」。心理学上の概念で疾患ではないため「治療」の対象にはなりませんが、そのような気質を持った人が少しでもストレスや悩みを軽減させるための工夫や解決策とは? 本記事では、精神科医の西脇俊二氏の著書『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方 』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、事例別に解決策を紹介します。第1回目の今回は、「疲れて頑張れない時の処方箋」をテーマにお届けします。
他人や周りに気を遣いすぎて疲れるHSP、やるべきことができないときに試してほしい「タスクを小分けにする」スモールステップ【精神科医が解説】
疲れて頑張れないときの処方箋
HSPの方々はただでさえ、人に気を遣いすぎる傾向があります。その気遣いは、ともすると「気疲れ」を招きますので、慣れないうちから飛ばしすぎると大変です。でも本当は、「他者の自己重要感*を満たす」は、最終的には自分の気疲れにも非常によく効きます。高い精度で相手に喜びをもたらせる、つまり最小限の気遣いで最大の効果を得られるようになるからです。
*自己重要感:自分が「大切にされている」感覚。他人に必要とされたり、頼られたり、共感されたり、承認されたりといった経験によって高まる。
しかしそれは、あくまで慣れたあと、もう少し先の話。最初から全力を注ぐと、効果が出る前に自分が疲れてしまうので気を付けましょう。
一方、「今すでに、毎日疲れ果てています」という方も多いと思います。無理もありません。繊細な人は、人への気遣いだけでなく、無数のことを敏感に感じ取って生きています。風景、音、家事や仕事、メディアから受け取る情報……あらゆることに心が動くので、人の2倍も3倍も疲れやすいのです。
疲労のせいでやる気が出ない状態も、しょっちゅう経験するでしょう。するとつい、「動けない自分はダメだ」と、思ってしまいますね。でも、疲れているのだから当たり前です。この状態でエネルギーに満ち溢れていたら、そのほうが変でしょう。この場面では、「自分はダメだ」をやめるだけでも、かなりラクになります。
繊細な人の疲労は、焦りや自責が上乗せされて膨張し、ますます動けなくなる悪循環に陥りがちです。ですから、こまめに「疲れて当たり前!」と自分に声をかけ、上乗せぶんの疲れだけでも食い止めましょう。
では、疲れやすさ自体には、どう対処すれば良いでしょうか。
残念ながら、感じやすさと疲れやすさはほぼ一体なので、その体質を変えるのは難しい、と言わざるを得ません。しかし、疲れやすくとも、無理なく頑張ることならできます。「疲れない頑張り方がある」と言ったほうが正確かもしれません。いや、もっと良い言い方がありました。「頑張らずに、やるべきことを実行する方法がある」、これがピッタリです。
次は、その方法をお話ししましょう。