誰しも「人から嫌われたくない」と思って生きているものです。しかしながら、そうした考えを突き詰めると「万人から好かれている」状態こそが理想ということになります。残念ながらそのような状態になるのは不可能でしょう。そこで本記事では、精神科医の西脇俊二氏の著書『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方 』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、事例別に解決策を紹介。第3回目のテーマは「人に嫌われたくない」です。
「あの人とは縁を切る!」つい絶縁することがクセになっているあなたへ…嫌いな人と接するときに覚えておいてほしい〈たった一つのこと〉【精神科医の助言】
嫌いな人を「完全に拒絶」することが悪手となるワケ
方法は、嫌いな人を「ほどほどに避ける」です。100でもゼロでもなく、中間です。「嫌うのがイヤ」は100に向かおうとするわけですが、それはストレスの多い時間を増やし、エネルギーを削ります。「私は人を嫌ったりしないんだ」と自分に言い聞かせつつ、苦手な相手とコミュニケーションをとるのは、わざわざ自らを消耗させるようなものです。
自分のメンタルのために、距離を取りましょう。適正距離は、「義務の範囲内」です。
嫌いな相手が上司なら、仕事上の会話はしないわけにはいきません。しかし、その上司がいる飲み会に参加する必要はありません。行かなくて良いというより、行くべきではありません。適正距離を保つレッスンだと思って、参加を控えましょう。
対して、トータルリジェクションはゼロに向かおうとする力です。これはこれで、人間関係の幅を狭めるうえに、ものの見方を一段と潔癖に、悪く言えば狭く、偏ったものにしてしまう恐れがあります。「二度と会わない」などの激しい反応をすると、相手だけでなく、周囲の人々にもなんとなく気まずい思いをさせてしまいます。
従って、ここも適正距離が必要。「絶縁しない程度の疎遠」が良い距離感です。
「あなたとはもう会わない」なんて大仰な宣言は必要ありません。会う回数や話す回数を、なんとなく減らしていけばいいだけです。
たとえば、大勢の人と同席する場では会い、二人きりになりそうなら帰る、といった方法が取れますね。相手からラインやメールが来たときも、「全部無視する」のではなく、返信までにやや時間を置くか、無難な返事をするのが良い匙(さじ)加減でしょう。
誘われたときは口実を設けて……ときには無難なウソをついて、断りましょう。毎回口実を考えるのが面倒なら、「義母の病院通いに付き添わないと」など、継続的に使える内容にするのも良いですね。
悩み時間を減らし、お互いが傷つかないための方便に罪悪感を持つ必要はありません。 自分に対する潔癖、相手に対する潔癖、どちらもマイルドにしていきましょう。