診察や治療を受けている患者にとって、医者の「言葉」はとても重要なものです。「心配ない」という言葉を聞くと、それだけで安心する人も多いのではないでしょうか。しかしながら、外科医にとって「心配ない」はタブーであると、医師の松永正訓氏はいいます。そこで本稿では、医師の松永正訓氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、医者が「心配ない」と言うときの本心と、どこまで信じてよいものなのかについて解説します。
どんな医者が言う「心配ない」なら信頼できる?
ですが、患者家族が心配を抱えてクリニックを受診したときに、医者が万が一の可能性を強調して保護者の心配を煽るのは、やっていることがネット情報の垂れ流しと一緒です。
風邪は肺炎に悪化し得るとこれまで何度も述べてきました。そのために何に注意をすればいいのかも語ってきました。そのうえで、現状は「心配ない」範囲に収まっていることを、私は積極的に話すようにしています。
医者が患者さんに向かって「心配ない」と言うときは、相当自信のあるときです。「心配ない」と言っておいて、あとで心配な事態に陥ったら責任問題になりかねませんからね。そういう意味で、医者が「心配ない」という言葉を口にしたときは、かなり信じていいと思います。
そしてそれは、ある程度経験を積んだベテランの医師の言葉に限定されると思います。若くて勢いがあって自信満々という医師(特に外科医)をときどき見かけますが、あれはちょっとどうかと思います。
医師になって15年以内の医者はまだまだ未熟で経験不足だと私は考えます。医者になるには最短、24歳で医師免許を取りますから、40歳以上の医師の言葉なら信頼できるのではないでしょうか。
- 外科医が、患者に「心配ない」「手術は成功しました」と告げることはない
- 最悪の場合を想定しながら診断しており、患者の指摘で気づくことはない
- 開業医が「心配ない」と告げたときは、その言葉を信じてあげてほしい
松永正訓
医師