両親にはいつまでも元気でいてもらいたい、と思っていても年齢とともに衰えていくのは自然なことです。離れて暮らしている子ども達にとって、いままで当たり前だった両親の健康状態に変化が現れるのは、大きなショックを伴うでしょう。本記事では、親の介護にどう向き合うべきか、鈴木修さん(仮名・60歳)の事例とともにFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
母に代わり、大切な家庭菜園を守ってきた「年金月23万円」一人暮らしの85歳父…年収1,300万円、60歳・老後安泰の長男が決断した「身を切る親孝行」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

おしどり夫婦の両親、母親が認知症に

鈴木修さんは、関西の有名な私立大学を卒業し、大企業の総合職として入社しました。数年おきに転勤があります。鈴木さんの家族は、妻(55歳・パート)、長男(26歳・会社員)、次男(23歳・公務員)、長女(20歳・大学生)です。

 

修さんには弟がいます。弟の直樹さん(仮名・54歳・会社員)も30代で結婚、住宅を購入して妻(54歳・会社員)と長女(16歳)、次女(13歳)の4人で暮らしています。関西の実家では、両親(父親:85歳、母親:82歳)が2人で生活していました。修さんと直樹さんは仲がよく、独身時代と変わらずお盆や年末年始の休暇には、家族を連れて帰省していました。両親ともににぎやかなことが好きなタイプで、集まると全員で11人にもなる大家族でしたが、母の手料理を食べながら楽しく過ごすのが恒例でした。

 

ところが、6年ほど前から母親の言動に気になることが現れ始めました。朝食を食べて1時間も経たないうちに「ねぇお父さん、朝ごはんまだ?」というのです。突然ひそひそ声で話し始めたかと思うと「お隣さんが盗聴しているから、大きな声で喋ってはだめ」などという発言も。

 

父親が病院に連れていき診察を受けました。認知症でした。しばらくのあいだは、なんとか父親と母親の2人だけで暮らせていましたが、次第に対応が難しくなります。

 

認知症の診断から1年ほどたったころ、父親の負担を減らすため、母親を介護施設に預けたほうがいいのではないかと修さんと弟の直樹さんとで相談しました。結局、母親を認知症の方を対象とする専門のスタッフのサポートを受けながら、少人数で共同生活を送るグループホームへ入居させることに。このころには母親は気難しくなってきていましたが、どこのグループホームを気に入るか、父親と一緒に何件も見学をして、決めたそうです。