75歳まで働く予定で、年金は「繰下げ受給」に

富永敦司さん(仮名・74歳)は、妻の洋子さん(仮名・74歳)と二人暮らし。一人息子は妻子を持ち、富永さんの自宅から車で30分程度の場所で暮らしています。

敦司さんは長年、中小企業の経理課で働いており、決算時期には帰宅時間が深夜になることも多く、多忙なサラリーマン生活を送っていました。一方の洋子さんは、そんな敦司さんを専業主婦としてサポート。敦司さんの帰宅時間が遅くなっても、文句ひとつ言わず、いつも機嫌よく家事や育児をこなす洋子さんを、敦司さんは「自慢の妻」と誇りに思っていました。

夫婦の資産状況は、預貯金と有価証券を合わせて700万円ほど。敦司さんは、定年後も嘱託職員として75歳まで雇用してもらえることになっており、嘱託後の年収は200万円です。加えて、洋子さんの老齢基礎年金が年間80万円支給されるため、現役時代よりも収入は下がるものの、引退後も夫婦2人で生活するには問題のない金額です。

そのため、敦司さんは65歳から受給できる年金を繰り下げており、75歳になったら、増額した年金を受け取りたいと考えています。

敦司さんが60歳で嘱託職員となってからは、夫婦で半年に1回は国内旅行に出かけることを楽しみにしており、引退後も、増えた年金分でそんな生活を続けられたら、と夢見ていました。

「繰下げ受給」を選択することで毎月の年金受給額が増額する

「繰下げ受給」 とは、年金受給の開始時期を遅らせ、将来受け取れる年金を増額させる制度です。

通常、65歳から年金の受給が開始されますが、この開始時期を遅らせることで、1ヵ月ごとに0.7%年金が増額していきます。年金の受給開始を5年間繰り下げた場合は、0.7%×60ヵ月で42%の増額です。

[引用:日本年金機構 年金の繰下げ受給 ]
出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」より引用

仮に、毎月の年金額として15万円受給する予定の人が、5年間繰り下げをした場合は次のようになります。

15万円×1.42=21万3,000円

このように、繰下げ受給をすることで、将来の年金受給額を増額でき、安定した暮らしを送りやすくなります。その一方で、繰り下げ後に受給を開始してすぐに亡くなってしまうと、年金をほとんど受け取れずに「繰り下げ損」となってしまうリスクもあります。