核家族化が進む日本では、子どもが都市圏に住み、親は地方に1人で暮らしているというケースが少なくありません。子どもとしては、近くに住んでもらって安心したいところですが、ここで選択を誤ると、思わぬ悲劇に見舞われることも……具体的な事例をもとに、介護施設への入居を検討する際の注意点をみていきましょう。実際に介護施設での勤務経験もある株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。
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Bさんの悲劇が“大袈裟”とは言えないワケ
ニッセイ基礎研究所「令和5年全国将来推計人口値を用いた全国認知症推計(全国版)」によると、2012年に462万人だった認知症患者は2030年に744万人に、2040年には800万人を超えると推計されており、高齢化とともに増加の一途をたどっています。
今回の事例のように「自分の姿を泥棒と見間違える」といったケースは多くないかもしれません。しかし、せっかく老人ホームに入居しても認知症が発症してしまい、せっかく見つけた“終の棲家”を退去せざるを得なくなるケースは少なくないのです。
では、AさんとBさんは、今後どのような対応をとるべきでしょうか。
認知症になっても安心して入居可能…3つの高齢者施設とその費用
下記のように、認知症になってからでも入居できる高齢者施設があります。主に、次の3つです。
認知症対応型生活介護(グループホーム)……月額13~20万円程度
認知症対応型生活介護は、認知症の症状をもつ人が少人数で生活する施設です。認知症に対応できる専門職員が配置されており、必要な支援を受けながら、家庭的な環境で安心して日常生活を送り、症状の緩和を目指します。
特別養護老人ホーム(特養)……月額6~15万円程度
特別養護老人ホームは、原則として要介護度3以上の方が対象ですが、認知症の方は要介護度2以下でも入居できるケースもあります。
また、看護師も配置されており、医療的ケアも可能です。ただし、つきっきりの看護が必要な場合、受け入れられない場合もあります。
介護付有料老人ホーム(特定施設)……月額20~45万円程度
介護付有料老人ホームには、介護士のほか、作業療法士や理学療法士といったリハビリ職や看護師が配置されています。部屋は個室になっており、24時間スタッフが常駐していることから、安心して過ごすことができます。
いずれの施設の場合も、入居したい旨を伝えると、相談員などの専門スタッフが自宅や施設、病院まで赴き、ヒアリングが行われます。その後、入居が可能と判断された場合は具体的な入居時期を打ち合わせるという流れです。
検討している人は、まずは施設に問い合わせてみるといいでしょう。
よかれと思っての提案だったが、申し訳ない…Bさんの後悔
Bさんは結局、Aさんを介護付有料老人ホームに移住させることにしたそうです。「よかれと思って実家を離れてもらったのに、申し訳ない……」Bさんは後悔の念に襲われています。引っ越しと新たな施設の入居費で出費はかさみますが、致し方ありません。
高齢化にともない、認知症を患う人は増えています。また、今回のケースのように、急な環境の変化に伴う強いストレスが原因で認知症を発症するケースも少なくありません。
お金が潤沢にあったとしても、準備を怠り、勢いで決断するのは控えましょう。認知症は親にも自分にも起こりうる可能性があります。「自分には関係のないこと」「いまは考えるのが面倒だ」と思わずに、周囲や専門家に相談のもと、念入りな対策を心がけましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役