がん治療の過程で休職したために月々の給与が貰えないうえ、高い医療費を背負うことになってしまう人も。しかし、確定申告の医療費控除と傷病手当金の制度を駆使することで、さまざまな費用を取り戻すことができるかもしれません。医師である勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。
がん治療のため休職→給与の「3分の2」が戻ってくる?…2年前に変わった〈傷病手当金〉の仕組み【医師が解説】
医療費控除は世帯全員が対象…過去5年以内なら還付申請も
【登場人物】
■教える人……勝俣範之先生
あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。
■教わる人……編集者O
身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。
勝俣範之先生(以下、勝俣):1月から12月までの1年間に一定額以上の医療費の自己負担があった場合、納める所得税の一部が控除されるのが、「医療費控除」です。控除額は、以下の式を参考にしてください。
編集者O(以下、O):これは、治療を受けた本人だけが対象なのですか?
勝俣:本人だけでなく、配偶者や親族などの生計を1つにしている世帯全員の医療費が対象になります。
O:医療費控除の対象として認められるものは、何でしょうか?
勝俣:医師による診療・治療費、通院費(公共交通機関が利用できない場合以外のタクシー代、自家用車のガソリン代や駐車場料金は対象外)、入院の際の部屋代や食事代、治療や療養に必要な医薬品代などです。なお、個人の希望による差額ベッド代は対象外です。
O:広範囲ですね。通院のための交通費や入院時の食事代まで認められるのは大きいです。どんな手続きが必要ですか?
勝俣:確定申告書を所轄の税務署に提出します。インターネットでの申請も可能です。過去5年以内であれば、還付申告もできますよ。