まだまだ人気の衰えないタワーマンション。しかし、実際に住んだ人のなかには、やっぱり転居しようという人も少なくないようで……。一体どのような理由があるのでしょうか? 本記事では、Aさん夫婦の事例とともに、高齢期を見据えた住まいの考え方について社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
1億円超の白金タワマンに住まう「世帯年収2,000万円の50代共働きパワーカップル」…家賃20万円の格落ち・埼玉低層マンションへ転居を決めたワケ
なぜ人はタワマンに憧れるのか
タワーマンション(以降タワマンと表記)とは、一般的に集合住宅としてつくられた20階以上の高層建築物を指します。
タワマンと聞いて思い浮かぶワードは「富裕層」「勝ち組」「パワーカップル」などでしょう。共有スペースが豪華であることや、窓からみえる夜景の美しさなどが人気の理由です。特に都内で有名・人気のタワマンといえば、港区をはじめとした湾岸エリアがあげられます。人気エリアの物件は、同じタワマンのなかでも眺望や共有施設の充実具合などが優れており、多くの人が一度は住んでみたいと憧れる、ステータスの高い住まいであるといえるでしょう。
白金タワマンに住むパワーカップルの過去
今年、定年を迎える同い年のAさん・Bさん夫婦は共働き。2人とも年収は1,000万円を超え、大手企業に勤めるいわゆるパワーカップルです。ですが、2人はパワーカップルになるまで幼少期からの苦労がありました。
2人は学生時代の同級生です。お互いの幼少期には、貧しさという共通点がありました。Aさんの父親は収入が少ないものの、きょうだいが多く、妹や弟たちとずっとひとつの部屋で生活しなければなりませんでした。Bさんは母子家庭により、築古の狭いアパートに暮らしていました。こうした境遇から、友達を家に呼んだことは一度もありません。自身の部屋を持つことはできず、「なんでうちは古くて狭いの」「恥ずかしくて友達を家に呼ぶこともできない」と反抗していた時期もあります。
AさんとBさんには、「いつか、堂々と友人を家に呼べる、人が羨むような広くきれいな家に住みたい」という願望がありました。猛勉強の末、国立大学へ進学、大手企業に就職を果たします。
借りていた奨学金も2年で完済し、貯蓄に充てました。結婚当時は東京近郊の社宅に住み、2人でいつかタワマンを購入しようと目標を立て、頑張ってきました。
40代後半には2人の年収は1,000万円となり、貯蓄は5,000万円超に。そこでお互いの仕事の利便性を考え、夢を叶えるため白金にあるタワマンの購入を決めます。
夫婦には子どもがいなかったため、1億円超の白金タワマンを購入するにも頭金2,000万円と返済に無理がないローンを組むことができました。40歳からの25年ローン、65歳年金受給で完済予定で月々の返済額は40万円ほど。時折、友人を家に呼ぶこともでき、長年の夢が叶ったと仕事に忙しくするなかでも楽しいタワマンライフを過ごしていました。