親が所有・維持管理しているお墓…相続手続きはどうなる?

この夏、関西地方の実家へ帰省予定です。父が高齢なので、そろそろ相続について相談する必要があるのですが、そのなかでも、お墓について悩んでいます。
 

私の父は本家の長男で、実家近くのお寺にある先祖代々の墓を守ってきました。しかし、長男の私をはじめ、3人いる子どもたちは全員実家を離れ、それぞれ東京や神奈川に自宅を購入しており、将来実家に戻る予定もありません。したがって、お墓の管理は難しい状況です。今後、いったいどうしたらいいのでしょうか。


40代 会社員(東京都墨田区)

先祖代々のお墓の維持管理に悩む人が増えています。

まず、お墓を相続する場合について見ていきましょう。お墓の相続手続きは、大まかにいうと以下の4段階があります。

①祭祀承継者を決める
②墓地の管理者へ連絡をする
③名義書換をする
④名義変更の手数料を支払う

①の「祭祀継承者」とは、祭祀財産を引き継ぎ、祭祀の主宰者となる人です。主にお墓の管理、法事などの執り行い、また墓地の管理者に対して管理費やお布施を払う人のことを指します。この祭祀管理者を誰にするかを最初に決定する必要があります。

②では、祭祀承継者が、墓地の管理者に相続が発生したことを連絡します。その際に、③の名義書換の手続きに関しての指示があります。

名義書換の手続きには、主に「墓地利用権の証明書」「祭祀承継者の印鑑登録証明書」「前の祭祀承継者が亡くなった事実が分かる戸籍謄本」といった書類が必要となります。

とはいえ、お寺や霊園ごとに書式や対応、必要書類など手続きが異なるため、管理者の指示に従い、必要な書類を提出してください。

④名義変更の手数料は、民営墓地か、公営墓地で変わってきます。民営の墓地の場合なら数千円から1万円、公営の墓地の場合なら数百円から数千円程度が相場となっています。場合によっては、お布施を包むケースもあるため、わからなければ、お寺や管理者に直接聞くことをおすすめします。

「祭祀継承者」は誰が、どのようにしてなる?

ここまで解説してきましたが、これらの手続きを主導する祭祀継承者を誰が務めるのか、気になる方も多いかと思います。

基本的には「被相続人が生前に指定した人」が祭祀承継者となります。しかし、地域などの慣習で決める場合や、家庭裁判所が決める場合もあります。

被相続人が生前に指定しておく場合は、できれば口頭ではなく、文章にしておくことをおすすめします。なぜなら、口頭の場合は「言った・言わない」などのトラブルが起こる可能性があるためです。そのような事態を避けるためにも、明文化し、遺言書に書いておいたほうがよいでしょう。

もし、被相続人から祭祀承継者の指定がなかった場合はどうなるでしょうか。長男や長女といった長子が務めるべきなのか…と、考える方もいるかと思います。

確かに昔は「祭祀承継者を長男が引き継ぐ」という慣習が見られましたが、現在はそのような慣習は薄れつつあります。そのため、亡くなった方からの指定が特になく、地域の慣習もなく、誰が祭祀承継者になるか決めかねる場合は、家庭裁判所に申立てをして、指定してもらうことになります。

家庭裁判所では、過去にどういった生活をしていたか、お墓との距離がどれくらいか、身分の関係がどうなっているのか、などを総合的に考え、祭祀承継者を決定します。