子どもに財産を贈与したい…贈与税の「2つの課税方法」とは?

これまで、一生懸命に働き、節税してコツコツ貯めてきたお金が数千万円あります。老後のために貯めたお金ですが、このまま使い切れそうもなく、せっかくならいまから子どもへ贈与しておきたいと考えています。贈与税は高いと聞いていますが、実際のところ、どうなのでしょうか?
 

60代・男性(千葉県船橋市)

まとまった資産があり、子どもへの生前贈与を考えている場合は、2024年1月に改正された、相続時精算課税制度の活用がお勧めです。

この制度は、改正によって年110万円の非課税枠が新設されたことなどから使い勝手がよくなり、資産家にも注目されています。

相続税は、相続人が被相続人から「死後に受け取った財産額」に応じて計算されます。たくさん財産が遺されれば、それだけ税金は重くなります。そこで、相続税の負担を抑えるため、前もって推定相続人に財産を贈与しておき、将来の相続財産を減らしておく、という方法が有効です。

実は、贈与税には2つの課税方法があり、非課税枠や相続が発生したときの贈与財産の取り扱いがそれぞれ異なります。

ここからは、2つの課税方法について解説していきます。

◆贈与税の課税方法①…暦年課税制度

1つ目は毎年110万円の非課税枠を使うことができる「暦年課税制度」です。

「110万円までお金を贈与しても税金がかかりません。ですから、110万円ちょうどを贈与しましょう」といったアドバイスを聞いたことのある方もいるでしょう。110万円までの贈与を毎年コツコツと長期間続ければ、無税で多額の財産を移転することができます。

ただし、相続発生の直前に贈与した場合、その贈与財産が相続財産に加算されることになるので要注意です。これまでは死亡前3年間でしたが、2024年からは、その期間が長くなったのです。

具体的には、相続発生日が2024年1月から2026年12月末までなら、従来通り3年間ですが、2027年1月から2030年12月末の場合、2024年1月から死亡日までの期間が、2031年1月以降は、死亡前7年間の贈与財産が相続財産に加算されることになります。

◆贈与税の課税方法②…相続時精算課税制度

もう1つの課税方法が「相続時精算課税制度」です。

相続時精算課税制度は、贈与した時点の課税を、将来相続が発生するときまで先延ばしにする制度であり、先延ばしにした分は、将来の相続税の計算に反映されます。生前は累計2,500万円まで税金が課されず、それを超えた部分に、前払いとして20%の税金が課されます。

相続時精算課税制度は、相続が発生すると贈与財産が相続財産に加算されることになり、結果的に相続税が課されることになります。基本的に相続税の節税効果はありませんが、2024年に110万円の基礎控除、すなわち非課税枠が新たに設けられ、その分の節税効果があります。この110万円は、将来の相続財産に加算されません。また、110万円以内の贈与であれば、申告する必要もありません。

(注)24年1月1日以降の贈与が対象
[図表1]贈与の非課税枠と相続発生時の贈与財産の扱い (注)24年1月1日以降の贈与が対象

上記の説明から、相続時精算課税制度の使い勝手がよさそうな印象を受けるかもしれませんが、注意点もあります。いったん相続時精算課税制度を選ぶと、その後に同じ人から暦年課税による贈与を受けることができなくなるのです。

相続時精算課税制度の活用がお勧めなのは、資産額があまり大きくなく、年110万円の基礎控除を使えば相続税がゼロになりそうな人です。