公的年金を受給していた家族が亡くなった場合、年金事務所に死去したことを告げるだけでは「未支給年金」を受け取り損ねてしまうかもしれません。故人の未支給年金は、生計を一にする三親等以内の親族なら、受け取ることができます。手続きの方法や注意点を見ていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
公的年金を受給していた夫が亡くなったが…
先日、夫が他界しました。夫は68歳で年金を受給していたので、年金事務所には夫が亡くなった旨をすぐ届け出たのですが、手続きはこれだけで大丈夫なのでしょうか?
60代・パート(相模原市)
公的年金は、年6回に分けて支払われます。支払月は、2月・4月・6月・8月・10月・12月の偶数月で、それぞれの支払い月には、その前月までの2ヵ月分の年金が支払われます。たとえば、8月15日に支払われる年金なら、6月と7月の2ヵ月分ということになります。
年金の受給者が亡くなれば、年金を受け取る権利はなくなります。これを「失権」といいます。
公的年金の受給権者が亡くなった場合に必要な手続きと提出書類
日本年金機構にマイナンバーが登録されていない公的年金の受給権者が亡くなった際には、年金の支給が続けられる可能性があるため、受給権者が亡くなった旨を年金事務所に届け出なければなりません。
具体的には、「受給権者死亡届」を市区町村役場、あるいは年金事務所へ提出し、年金の支給を止める、といった手続きが必要となります。
この「受給権者死亡届」の用紙は日本年金機構のWEBサイトからダウンロードすることができます。
もし日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合は、原則として届け出する必要はありません。
「受給権者死亡届」の提出期限と提出先ですが、国民年金は「亡くなった日から14日以内」に居住地の市区町村役場へ、厚生年金は「亡くなった日から10日以内」に居住地の年金事務所へ、となっています。
受給権者死亡届と同時に提出すべき必要書類は「亡くなった方の年金証書」のほか、亡くなった事実のわかる書類として「住民票の除票」「戸籍抄本」「死亡診断書」のうち、いずれか1つが必要です。
「未支給年金」があった場合の注意点と請求手続き
亡くなった方の年金は、亡くなった月の分まで支給されます。
奇数月に相続が発生した場合の計算は簡単です。その月は年金支給がないので、相続発生日における未支給年金は2ヵ月分です。翌月、亡くなった月とその前月の2ヵ月分が支給されることになります。
一方で、偶数月の場合は少しわかりづらいので要注意です。偶数月は15日に年金支給日があるため、15日よりも前に相続が発生したのか、15日よりも後に相続が発生したのかによって、取り扱いが変わってきます。
15日より前に相続が発生すると、まだ年金は支給されていませんので、2ヵ月分が未支給となります。さらに、その段階で相続が発生したら、その月の1ヵ月分の年金がもらえることになり、合計して3ヵ月分の未支給年金が発生します。
一方で、偶数月で15日よりも後に相続が発生した場合は、15日の支払日に、すでに前月と前々月の年金は支給されています。そのため、15日よりも後に相続が発生すると、亡くなった月の1ヵ月分だけが未支給となるのです。