相続で自営業を承継…確定申告はこれまで通りでOK?

父が亡くなり、父が営んでいた自営業を継ぐことになりました。確定申告に関してはどのような手続きが必要でしょうか? いままで通りのやり方でいいのでしょうか?
 

40代・男性(東京都墨田区)

事業主だった故人が、確定申告を「青色申告」で行っており、事業を引き継いだ方が引き続き青色申告を行うには、税務署へ「青色申告承認申請書」を提出して申請します。

事業を相続しても、青色申告の承認までは引き継がれないため、事業を引き継ぐ人が、新たに青色申告承認の申請をしなおす必要があるのです。

ちなみに、青色申告できる人は、事業所得がある人だけでなく、不動産所得がある人も含まれます。取引を会計帳簿に記帳するなど、きちんとした帳簿作成やその保管が求められますが、所得税の優遇措置も受けられるため、青色申告をしている事業者も少なくありません。

なお、相続以前に自分の事業で青色申告を行っている方が、相続によって親の事業を引き継いだ場合は、青色申告承認申請書の提出は不要です。

青色申告の承認申請期限、準確定申告前になることも!

相続の際には「準確定申告」を行います。

準確定申告とは、故人に代わって相続人が確定申告をすることで、相続した日の翌日から4ヵ月以内に申告と納税の両方を行う必要があります。

相続人が故人の事業を引き継ぎ、青色申告を行う場合ですが、亡くなった時期によっては準確定申告の期限より先に青色申告の承認申請の提出期限がくることがあるので要注意です。承認申請の申請期限については後述します。

青色・白色とも、亡くなった日によって提出期限が変わる

亡くなった方の事業を引き継ぎ、青色申告を希望する場合、亡くなった方が白色申告だったのか、青色申告だったのかによって、青色申告承認申請書の提出期限が異なってきます。

◆故人が青色申告だった場合

まず、故人が青色申告を行っており、相続開始日が年初から8月31日までであれば、4ヵ月以内に青色申告承認申請書を提出しなければいけません。このケースであれば、準確定申告と期限は同じです。

しかし、相続開始日が9月1日から10月31までであれば12月31日まで、11月1日から12月31日までであれば翌年2月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。もし、12月31日に亡くなった場合は期限が1ヵ月半しかないため、早急に手続きを進める必要があります。

◆故人が白色申告だった場合

次に、故人が白色申告だった場合、相続開始日が年初から1月15日までであれば3月15日までに、1月16日から12月31日までであれば相続開始日から2ヵ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。

白色申告から青色申告に変えたい場合は、いずれにしても2ヵ月よりも期限が短くなることはありません。タイトなスケジュールにはなりますが、きちんと申請をおこなうようにしましょう。

相続で事業承継した場合に「提出すべき書類」

また、事業を相続した人が青色申告をする場合、青色申告承認申請書のほかにも必要な届出があります。

◆個人事業の開業届出・廃業届出等手続

1つ目が「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」です。個人事業主が亡くなった場合、その事業主による事業が終了するため、相続人が故人に代わって廃業届を提出する必要があります。それと同時に、事業を引き継いた方が新たに事業を開始する、開業届の提出が必要となります。

これらの提出期限は、以前事業をしていた方が亡くなった日から1ヵ月以内です。

◆所得税の青色申告の取りやめ手続

2つ目が「所得税の青色申告の取りやめ手続」です。

この手続は、名前の通り、青色申告の承認を受けていた方が亡くなったことにより、青色申告を取りやめる手続きです。提出期限は、青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までです。

◆給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出

3つ目は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出」です。これは、相続して事業を継ぐことによって、給与の支払をしている事務所を移転し、引き続き従業員を雇う場合、または新しく事務所をかまえた場合に必要となる届出です。

提出期限は、事務所の移転があった日または新しく構えた日から1ヵ月以内です。

◆青色事業専従者給与に関する届出手続

最後が「青色事業専従者給与に関する届出手続」です。以前事業をしていた方が亡くなる前から青色事業専従者だった人に対して、事業を継いだあとも引き続き青色事業専従者として給与を支払い、その給与を必要経費にしたい場合に必要となります。

提出期限は、必要経費に算入したい年の3月15日までとなっています。ただし、その年の1月16日より開業した場合や新しく専従者が増えた場合は、その日から2ヵ月以内となります。

この青色事業専従者とは、青色確定申告する人と一緒の生活資金で暮らしている15歳以上の家族や親族の従業員のことを指します。家族経営と呼ばれる事業の従業員はこのケースが多くなっています。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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