貯蓄におけるひとつの手段としてのタンス預金。とりわけ親世代の高齢者のなかにはいまだに現金主義という人も多いでしょう。しかし、現金を手元に置いておくことで、生まれるリスクも当然あって……。本記事ではAさんの事例とともに、高齢親の資産管理について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
80歳母、質素にコツコツ「タンス預金3,000万円」を貯めたはずが…自慢の美しい長髪がコロナ後に一変、ボサボサ頭に。異変に気付いた50代息子、「母のボストンバッグの中身」に唖然【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症になる前に

ポイント1:そもそも相続税がかからなかった可能性も

Aさんのように質素倹約でコツコツと暮らした結果、数千万円の預貯金を持つ方は少なくありません。3,000万円は大きな資産であることに変わりはありませんが、Aさんには子供が2人いるため、遺産の総額から引ける基礎控除が4,200万円あります(3,000万円+600万円×2人)。

 

Aさんの預貯金は3,000万円だったので、ご自宅と合わせてもこの基礎控除の範囲内に収まっていた可能性があります。また、仮に相続税が発生したとしても決して多額ではなく、手持ちの預貯金から少し払えばよい程度だった可能性が十分にあるのです。

 

Aさんのこれからの老人ホームでの暮らしを考えると、ちょうど相続税がかからない範囲に預貯金を使ってしまっている可能性もあります。

 

ポイント2:普通に金融機関に預けておく

現金にすれば相続税がかからないというわけではありません。そもそも預金のままでも相続税がかからないのであれば、普通に金融機関に置いておけばよかったのです。

 

2024年7月からは新札(新券)が発行されます。旧札もそのまま使うことができますが、新札が流通の大半となるのは時間の問題です。やがて旧札は使いにくい存在へとなっていくでしょう。

 

認知判断能力の低下に伴い、現物の管理は徐々に難しくもなります。また、認知症の方特有の妄想のひとつに、大事なものを盗られたと訴えることが挙げられます。

 

盗られて困るようなものは、極力身の回りに置かないことが認知症対策のひとつといえるわけですから、多額の現預金を身の回りに置くことはリスクの塊でしかないでしょう。