現行、65歳から受給開始となる日本の年金。なかには何もしなくても年金をもらえるようになると勘違しているケースも。年金を受け取る権利が発生したら、その権利を行使しないと年金はもらえません。しかも勧められるがままに手続きを進めたら、結果、損をしている、なんてことも。みていきましょう。
月収45万円「63歳10ヵ月」のサラリーマン…日本年金機構から届いた「緑色の封筒」に素直に従い「年金受給」で大後悔「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金の請求…本当にベストタイミングか?

年金請求書の提出から1~2ヵ月程度で「年金証書・年金決定通知書」が届き、さらに1~2カ月後に、年金のお支払いのご案内(年金振込通知書・年金支払通知書または年金送金通知書)が届き、年金の受け取りがスタートします。

 

このように、老齢年金は受給権が発生したら、自身で請求することで給付が始まります。請求しなければ給付はナシ。年金の請求をせず、受給発生から5年が経過すると、5年経過分の年金は時効を迎え、受け取れなくなる場合があります。そのため早めの請求を、と呼びかけられています。

 

――時効!? それは大変だ、請求せねば

 

素直に従う64歳の誕生日3ヵ月前のサラリーマン。ただ、素直に従うのが良いとは限らないのが年金制度の難しいところ。厚生労働省の調査によると、60代前半正社員の平均月収は44.1万円、残業代なども含めると、平均46.0万円になります。

 

――特別支給の老齢厚生年金がもらえる!

 

このサラリーマンが日本年金機構から届いた「緑の封筒」に促されるまま手続きを行ったとしたら……もしかしたら、後悔するケースもあるかもしれません。

 

ここで知っておきたいのが「在職老齢年金」。厚生年金保険料を払いながら年金を受け取る場合、つまりサラリーマンをしながら年金をもらう場合、給与+年金=50万円の基準額を超えると、年金支給停止となる可能性があるというもの。その調整額は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2」。またここでいう年金は、老齢厚生年金に相当する部分で、老齢基礎年金は支給停止の対象にはなりません。

 

もしこのサラリーマンが64歳時点で平均的なサラリーマン(正社員)の給与を手にしていたら、年金支給停止の対象になるはずです。また給与収入に年金所得が加わることで、所得税の税率が高くなったり、社会保険料の負担が拡大する場合も。

 

そんな事実を後で知ってしまうと……

 

――えっ、素直に従っただけなのに、何かの間違いではないんですか?

 

と後悔してしまうかも。年金の受給開始のベストタイミングは、現在の収入状況や家族構成などによって微妙に変わるもの。事前のシミュレーションのうえ、自分にとって何がベストかをしっかり考えることが重要です。

 

[参照]

日本年金機構『老齢年金の請求手続き』

日本年機構『働きながら年金を受給する方へ』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』