AIはさまざまな分野で活用されていますが、私たちが普段買い物する食べ物や生活用品の商品開発にもAIは活用されています。食品の商品開発にAIを導入することでユーザーの好みや嗜好にきめ細やかに対応することができたり、商品開発の時間を短縮したりすることができます。今回は「AI×商品開発」をテーマに身近な活用事例の最前線をライターの有馬美穂さんが解説します。
レシピ開発からAIペルソナまで…AI×商品開発の最前線

新商品のコンセプトを入力すると瞬時にレシピを出力! サッポロビールの商品開発

サッポロビールは、日本アイ・ビー・エム株式会社と共同開発したAIシステム「N-Wing★(ニュー・ウィング・スター)」を活用して商品を発売しています。このシステムは約170商品で検討した配合(約1,200種)や原料情報(約700種)を含むレシピを学習しており、新商品のコンセプトや必要な情報を入力すると、瞬時に原料の組み合わせ、配合量まで予測。推奨配合と推奨香料からなるレシピを出力します。

 

商品開発AIシステム「N-Wing★」(サッポロホールディングス提供)
商品開発AIシステム「N-Wing★」(サッポロホールディングス提供)

 

オタフクソースと同じように、これまで属人化されていた知見がデータに集約されることで、開発作業時間を大幅に短縮できるといいます。短時間にあらゆるレシピが試せそうですね。人間の働き方を改革し、捻出した時間によって一歩先の市場創造型の商品開発へとつなげたい考えです。

ユーザーのAIペルソナを構築! キリンビールの商品開発

一方、キリンビールの「キリン 氷結®」では、ユーザーのAIペルソナの構築を開始しています。これまで新商品の開発工程では、ユーザーインタビュー調査を行なっていたという同社ですが、インタビュー調査には平均50時間と多くの時間を費やし、商品開発が長期化してしまう課題があったと言います。そんな課題を解決するために、過去のユーザーの声をAIに学習させ、AIペルソナを構築しました。「30代のスポーツ好き」「20代の酒好き」などそれぞれのAIペルソナと新コンセプトやフレーバーなどについて対話を重ねることでユーザー理解の質の向上、そのあとで行う実際のユーザー調査の精度向上につなげています。

 

ほかにも、AIによって配送ルートの最適化、発注サポートなども行なってきたコンビニ大手のセブン-イレブン・ジャパンは、2024年春から、商品企画にも生成AIを導入し、企画にかかる期間を最大で10分の1に短縮すると2023年11月に日経新聞が報じました。全店舗の販売データのほか、SNS(交流サイト)のコメントなども分析に加えて、商品の文章や画像をAIに作成させて、トレンドやニーズに合った商品を作り出そうと試みています。