AIはさまざまな分野で活用されていますが、私たちが普段買い物する食べ物や生活用品の商品開発にもAIは活用されています。食品の商品開発にAIを導入することでユーザーの好みや嗜好にきめ細やかに対応することができたり、商品開発の時間を短縮したりすることができます。今回は「AI×商品開発」をテーマに身近な活用事例の最前線をライターの有馬美穂さんが解説します。
レシピ開発からAIペルソナまで…AI×商品開発の最前線

木村屋とNECが「恋AIパン」を共同開発

あんパンで有名な「木村屋總本店」も、NECとの共同開発で「恋AIパン」を開発。ABEMA TVの恋愛番組『今日、好きになりました。』の参加者の会話と、フルーツやスイーツが登場する曲の歌詞をNECのAIで分析し、恋愛感情と食品を紐づけて味を表現した「恋AIパン」5種を発表しました。

 

「恋AIパン」(木村屋總本店提供)
「恋AIパン」(木村屋總本店提供)

 

具体的には、

 

(1)NECの高性能音声解析を用いて番組の出演者の会話データ15時間分をテキストとして抽出。

(2)さらに、出会いや告白、初めてのデートといった、恋愛シーンごとの会話文に32個の感情ワードとの相関を表した感情スコアを付与し、恋愛シーンごとの感情の傾向を可視化。

(3)約100万曲の日本語の歌詞データベースから、183種類のフルーツやスイーツなどの食品を含む約3.5万曲を抽出し、NECのデータ意味理解技術を活用した「NEC Data Enrichment」を用いて、食品を含む歌詞に感情スコアを付与し、食品のイメージが持つ感情の傾向を可視化。

 

最後に、(2)と(3)の感情の傾向が似ている恋愛シーンと食品を紐づけ、恋の感情を表現する食品上位50種をリストアップ。過去に多くの蒸しパンを開発してきた木村屋の職人により相性の良い食品の組み合わせを選定して、恋を味として再現する「恋AIパン」を開発しました。

AIの進化によって試されるものは?

AIがめまぐるしく進化するなかで、想像を超えた新しい商品や私たちのニーズによりマッチした商品が登場してくるのは間違いないでしょう。一方で、人の手による作業を減らし、働き方の改革や効率化に貢献したことで、かえって人間による創造力・発想力が試されているともいえそうです。

 

【プロフィール】

有馬美穂

ライター。2004年早稲田大学卒業。『VERY』をはじめ、さまざまな雑誌媒体等で主にライフスタイル、女性の健康、教育、ジェンダー、ファッションについての取材執筆を行う。