※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
味のデジタル化へオタフクソースの取り組み
AI(Artificial Intelligence)=人工知能。コンピューターが学ぶ機械学習が、人間の知的活動に大きく貢献しつつあります。自動運転や画像生成などをAIの用途として思い浮かべる場合が多いかもしれませんが、実は身近な食品開発などにもAI技術の活用が進んでいます。
例えば、ご存知オタフクソース。お好み焼きやたこ焼きを作るときに欠かせないあのソースですが、おいしさを追求するためにAI活用がすでに進んでいます。オタフクソースではこれまでも「焼きそばソース大人の辛口」などのパッケージデザインにAIを活用した実績があり、新しいデザイン案をAIに評価させ、実際に売り出しています。「辛口」のフォントがより印象的です。
それにとどまらず、商品開発の分野でもAIを活用できないかと、2019年から味のデジタル化に取り組んできました。これまで商品開発は、官能評価を用いて行われてきましたが、開発者の熟練や時間が必要とされ、味覚がベースとなり個人差が出てしまうという部分がネックでした。こうして属人化されてきた「味の創造」ですが、株式会社オタフクソースは株式会社IHIと共同で、ソースの新規開発において、製品や試作品の理化学分析値、味や風味などの特徴を表すキーワード、そして分光スペクトル(光の波長ごとに吸収度を表したもの)のデータにより味をデジタル化し、AIに学習させることで、目標の味に近いものを抽出する「レシピ検索システム」を2023年に完成させました。オタフクソースでは、過去10年間で15,000件以上のレシピを蓄積しており、新レシピを作る際はまず目指す味に近いレシピの検索からスタートします。これまでは、レシピの抽出に手間がかかり、時間も30〜60分はかかっていたのだそう。しかし、「レシピ検索システム」を導入後はレシピの抽出が約5分に短縮。これなら、熟練者でなくても簡単に目的の味にたどり着くことができます。単に時間節約に貢献するだけでなく、新たな発想を生み出す余地を与えうるかもしれません。