夫を亡くした妻の生活を支える「遺族年金」。しかし、遺族年金だけを頼りに生きていくのは、現実的ではなさそうです。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の井内義典CFPが、具体的な事例を交えて解説します。
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収入減に追い打ちをかける「負担増」のワケ
夫の死後、収入が大幅に減ることとなった陽子さんですが、支出面でも負担が増えるという事実を認識しなければなりません。
国民年金の第3号被保険者だった陽子さんは、夫が亡くなったことにより第1号被保険者となります。これにより、陽子さん自身が国民年金保険料を納めなければなりません。月額は1万6,980円(2024年度)で、現行制度上は、60歳になるまで毎月納付する必要があります。
なお、国民年金保険料は、収入が少ない場合には保険料免除の申請も可能です。ただしそうなると、保険料を納付した場合と比べ、将来の老齢基礎年金が前述の70万円よりも少なくなってしまいます。
「厚生年金」への加入が現実的だが…
定額の国民年金保険料を払えば大きな負担になる、免除を受ければ将来の年金が減る」という現状では、陽子さんが厚生年金に入るというのが現実的な対策といえます。
未加入の場合は定額での国民年金保険料納付義務があるのに対し、厚生年金に入れば給与(標準報酬月額)に応じた厚生年金保険料を負担することになります。
給与が低いときは保険料も安く済み、昇給すれば保険料も上がるでしょう。なお、厚生年金に加入した場合も60歳になるまでの期間が「保険料納付済期間」と計算され、老齢基礎年金は3号だった場合と同額となります。
ただし、陽子さんの場合、注意点があります。それは、厚生年金に加入すると「受け取れる遺族厚生年金が減る」という点です。
厚生年金保険料を負担すると、将来もらえる老齢基礎年金と老齢厚生年金が増えます。しかし、65歳以降は老齢厚生年金に相当する遺族厚生年金が支給停止となるのです。
たとえば、現状10万円もらえるはずの老齢厚生年金が20万円増えて30万円になった場合、差額支給の遺族厚生年金は80万円から20万円減って60万円になる、ということです。
また、65歳時点で遺族年金を受けられる人は、老齢基礎年金や老齢厚生年金の「繰下げ受給」は選択できません。したがって、必ず65歳から受給開始となります。
にもかかわらず、陽子さんが厚生年金に加入するメリットはあるのでしょうか?