深刻な表情の妻から見せられた「預金通帳」

ある日のこと、妻の直子さんが深刻な表情で言いました。「ねえあなた、これを見て欲しいんだけど」。大西さんが預金通帳を見ると、5,000万円あった預金が、なぜか2,000万円まで目減りしています。

「これはいったいどういうことだ!」と大西さんは妻に詰め寄りましたが、「それは私のセリフです」と、妻は大西さんに、この3年間でかかった具体的な支出の内訳を説明しました。

<支出の内訳>

・ベンツ購入:800万円、維持費(3年間):200万円

・リフォーム代:1,000万円
(内訳:屋根・外壁、キッチン、浴槽、トイレ、耐震補強など)

・国内旅行(半年に1回): 150万円(25万円×6回)

・その他夫婦の支出(3年間):850万円

合計……3,000万円

退職記念に買った愛車のベンツには、実は思わぬ落とし穴がありました。見た目や乗り心地はいいものの、外車特有の高額な修理費と維持費が、想像以上に大西家の家計を圧迫する事態となっていました。

さらに大西さんは、自宅のリフォームに1,000万円もかかっていたことも把握していませんでした。気になる箇所があるたびに業者を呼んで修繕していたため、費用が積み重なり、高額になっていたようです。

生活費については、浪費しないよう心がけていた大西さんですが、給与収入がないことから、資産は毎月減る一方。直子さんも、あまりの支出ペースの速さに、不安になりつつも、色々と口をはさむと、すぐに不機嫌になる夫と話し合いをするのが面倒で、つい後回しにしてしまっていたのでした。

「ちょっと安易に考えすぎていたかもしれないな……」

わずか3年で資産が3,000万円も減ってしまったことに、大西さんは大きな焦りを覚えました。

このままではまずいと感じた大西さんですが、ふと「もう少しで年金がもらえるようになるから、生活の足しになるんじゃないか」と希望を持ちます。

これまできちんと「ねんきん定期便」を確認してこなかった大西さんですが、直子さんが「ねんきん定期便」を引き出しに保管していたことを思い出し、それを取り出してみました。

自身の年金額をみた大西さんは、衝撃を受けます。「えっ! こんなに少ないの?」

年収1,200万円だった大西さん、年金受給額「290万円」に衝撃

「ねんきん定期便」を見ると、65歳から受給できる大西夫妻の年金額は

夫:210万円(老齢基礎年金+老齢厚生年金)

妻:80万円(老齢基礎年金)

合計290万円

と書かれています。月額に直すと、22万円程度になる見込みです。

「長い間、高額の厚生年金保険料を納めてきたのに、もらえる年金はこの程度なのか……」と大西さんは肩を落としました。

このままでは残りの資産がどんどん目減りし、枯渇してしまうかもしれない……焦った大西さんは、直子さんを連れて、以前両親の相続時にお世話になったFPに相談することにしました。