中国が設定した区画「適飛空域」とは
特に注目すべきは「適飛空域」と呼ばれる区画の設定です。高度120メートル以下で、空港や軍事基地、発電所などのインフラ、地方政府によって特に定められた地域、それに中国らしいのが共産革命の重要な記念地の上空においては飛行が禁じられますが、それ以外はオフィス街や住宅街も含めた地域が「適飛空域」とされます。
この区域では微型、軽型(機体重量4kg以下、離陸重量7kg以下、最高時速10km以下の機体)は飛行許可がなくとも随時飛行させることができます。つまり、3kgまでの荷物を運ぶ配送ドローンは都市内をかなり自由に飛ぶことが法的に認められました。
人間を乗せるような大型のeVTOLについても免許、保険などのクリアすべき条件が確定しました。前述の億航智能のeVTOL「EH216」は2023年2月に日本で試験飛行するなどの実績を積み重ねてきましたが、今年4月には量産許可を取得。年内にも商用飛行をスタートする見通しです。
深圳市ではすでに100カ所以上のeVTOL離発着スポットの着工が始まっているとのこと。2025年までに600カ所の整備を目指しています。EH216は最高時速130キロ、航続距離は30キロというスペックです。
飛行機に比べれば遅く、飛べる距離も限られていますが、離発着スポットのはるばる空港まででかける手間を考えると、タクシー感覚で使うことができます。当初の路線としては深圳・香港島間、深圳・珠海間など海に隔てられて、来るまでは大きく回り道をしなければならない目的地への便が有力です。
同じく広東省の広州市も低空経済に積極的です。すでに小型貨物の輸送で使われており、病院の血液サンプルや、越境EC(ネット注文で海外から低関税で注文できる仕組み)のお急ぎ便に活用されています。
大きく動き出した、中国の低空経済。中国民用航空局は2030年までに2兆元(約44兆円)の巨大産業になるとの見通しを示しています。今まで2Dだった都市交通が立体的な3Dへと変わることによって、経済活動の効率性が高まることが期待されています。