※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
「低空経済」ってなに?
「2024年は低空経済元年になる」
最近、中国のビジネス界でよく聞く話です。フードデリバリーを注文すると、あっという間にドローンが届けてくれる、空飛ぶ車で渋滞知らずといったSFのような世界がついに到来するのではないかと期待が高まっています。
そもそも、低空経済とはなんでしょうか? 原則的には高度1,000メートル以下(条件によっては3,000メートル程度までをカバー)の低空を活用し、有人、無人のドローンを活用した各種のサービスを意味します。
フードデリバリーや宅配便を自宅まで配送してくれる、空飛ぶ車とでもいうべきeVTOL(イーブイトール/電動垂直離着陸機)という新たなモビリティが代表的な事例となります。
電動の無人航空機やマルチコプター(3つ以上のローターを搭載した回転翼機。小型ドローンでは主流の形態)は20世紀半ばから研究開発が続けられてきました。一般の人でも安くホビー用ドローンが購入できるようになってからもすでに10年以上が過ぎています。おもちゃとしても、産業のための道具としても、あるいはウクライナ戦争で広く報じられているように軍事用途としても、ドローンはすでに珍しい存在ではありません。
すでにドローン操縦士は職業として定着しました。撮影需要から始まりましたが、インフラの点検、各種の調査、消火活動、農薬の散布などさまざまな用途があります。
山間部を走る高圧電線の点検など、ドローンを使うことで労力が数十分の1になる作業もあります。遅延が少ない5G通信を使うことで、都会にいながら田舎のドローン作業を実施する研究も進められています。
また、中国のドローン活用で見逃せないのが農村です。中国では農業ドローンを購入し、農家を回って農薬散布の仕事を請け負う、フリーのドローン操縦士が農民の新職業として定着したほど。農業の省人化、高度化には欠かせない存在です。
そう考えると、なぜ今さら低空経済なんていう話になるのか、不思議に思う方もいるかもしれません。たしかにドローンはすでにビジネスに使われるようになっていますが、技術的に安全を保障することが難しく、人口密集地などでの利用は困難でした。大都市の空を無数のドローンが飛び回っているという光景はまだ実現していません。