疲労回復に欠かせない睡眠。入浴のタイミングによって、その質を向上させることができるといいます。温泉療法専門医である早坂信哉氏の著書『最高の入浴法 お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)より、睡眠の質を上げるために知っておきたい入浴の仕方について、詳しくみていきましょう。
「お風呂で体を温めるとよく眠れる」は間違い?…良質の睡眠をとるために知っておきたい、入浴と睡眠の〈本当の関係〉【専門家が解説】
朝まで快眠できる方法とは?
②風呂は、就寝の「1~2時間前に」
良質な睡眠をとるためには、上手に体温を下げていくことが大切です。
「体を温かくするのが大事じゃなかったの⁉」と驚かれるかもしれません。温めるのはもちろん大事なのですが、人間は体温が高いままでは安眠できず、眠りの質が低い睡眠状態が続いてしまいます。
お風呂に入ると一旦体温が上がります。その後、約1時間半程度で急速に体温が下がってきます。この急速に体温が下がるタイミングでベッドに入るとよい睡眠がとれます。
小さな子どもは、眠くなると手足が温かくなることに気がつきます。そもそも「手足の体温が高い状態」というのは、体が熱を体外に放出して体温を下げている状態のこと。副交感神経が優位になり、血流を体の隅々まで行き渡らせることで、体の末端から熱を逃がし、結果として睡眠に入ります。
しかし、交感神経が優位のままであったり、手足が冷たい冷え性だったりすると、熱がうまく放散できず、逆に体の温度が高いままになり、眠りの質を下げてしまうのです。
理想的な流れとしては「お風呂で心身を温め、血流をアップさせる&副交感神経を優位にする→手足から熱を放出する→体温が下がる」というもの。つまり「体温を急速に下げて安眠するために、お風呂で体を温めること」が重要なのです。
睡眠の質を高めるために、最終段階の「体温が下がる」タイミングと、入眠のタイミングをうまく合わせましょう。そのためには、「お風呂から出た後の1~2時間以内」に、ベッドに入ることをおすすめします。
お風呂から出て就寝までの間には、スマホを見る、仕事をするなど、体が緊張する行為は厳禁です。せっかくオフにしたスイッチが、また交感神経優位の状態に切り替わってしまいます。
お風呂上りはテレビやパソコン、スマホなどは極力控え、部屋を薄暗くして静寂を保ちましょう。部屋を暗くすることで、睡眠の質を高める「メラトニン」というホルモンが分泌され、ぐっすりと眠ることができます。
もし翌朝に早起きしなければならず、帰宅から睡眠まで30分も時間がないときは、体温が上がりすぎない程度にさっと入浴しましょう。
③夕食から就寝までは「2時間あける」
眠るときに食べものが消化管に残っている状態では、質の高い睡眠になりません。また、血糖値が高い状態でも体をリラックスさせることができません。
糖質を含む食事をすると、脳にエネルギーが送られるので、私たちの体は興奮状態になってしまいます。そのため、夕食後に1時間程度の休憩を設けてお風呂に入ることをおすすめします。この1時間の間に、体内で消化を落ち着かせます。そして入浴の代謝促進により、血糖値下降や消化・吸収が進み、穏やかな就寝につなげていくことができます。
このように考えると、ぐっすり眠るためには、夕食後から寝る前までのスケジュールが自然とできてきます。夕食後に休憩を1時間、お風呂に30分(その内、湯船に浸かるのが10~15分)、歯磨きや着替えなど就寝準備に30分~1時間という流れが理想的かと思います。
「必ずこのタイムスケジュールを守らねば」と思うとストレスになってしまいますから、あくまで目安として参考にしてみてください。
早坂 信哉
温泉療法専門医