お風呂での死亡者は、交通事故より多い

「寒い、寒い!」裸で腕に血圧計をまいた若い男性アナウンサーは、そう言って暖房のない脱衣室でガクガクと震えていました。その血圧は150を超えています。先ほど暖房の効いたリビングにいたときは110だったので、プラス40もの急上昇です。ある冬の夜に、テレビ番組の撮影に立ち会ったときの様子です。

冬のお風呂は実は危険な一面があります。最近の研究によると、入浴で亡くなる方は年間約1万9,000人で、その数は冬に圧倒的に多くなります。特に高齢者に多いのもその特徴です。冬にお風呂で亡くなる人が多いというのはどういう理由からなのでしょうか?

最近話題の「ヒートショック」とは、急な温度差が体への刺激を与え血圧が急上昇し、重大な病気を起こすことです。暖房のない脱衣場は、強烈な寒さが交感神経を刺激し、急激に血圧を上げます。また、42℃を超える高温の湯の入浴は、熱さでさらに血圧を急上昇させます。寒さと熱さのダブルの刺激で血圧が急上昇するのです。

血圧の急上昇は脳卒中や心筋梗塞のリスクとなります。脳卒中が起こると意識がなくなったり、手足が麻痺したりします。お風呂で意識がなくなると溺れて命に関わることもありますのでとても危険です。

また、強い刺激が心臓へ負担をかけ、心筋梗塞になるとひどい胸痛を感じます。実際にお風呂で亡くなった人の原因を調べると、脳卒中や心筋梗塞が高い割合を占めているのです。私たちが以前行った調査でも、お風呂で意識がなくなるといった事故が多いという事実もわかっています。

ご高齢の方は、若年層と比較するとお湯の熱さを感じるセンサーが鈍くなっていることもあり、熱いお湯が好きな方が多いです。そのため、心臓発作や熱中症のリスクも高くなります。

銭湯や温泉など、友人同士で入っていると、おしゃべりに夢中になり、必要以上に長くお湯に浸かってしまうこともあるでしょう。しかし、熱いお風呂に延々と入り続けても健康効果はありませんし、熱中症などのリスクが増すだけです。