一日の疲れを取るためにも、欠かせない「入浴」。入浴=健康によい、と手放しで考えがちですが、医学的観点からいうと、必ずしもそうとも限らないようです。医学博士であり、温泉療法専門医である早坂信哉氏の著書『最高の入浴法 ~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)より、実は「医学的効果のない」入浴の仕方について、詳しくみていきましょう。
疲れがとれない!「間違った入浴法」とは
私たちは、学校で「お風呂の入り方」を学ぶわけではありません。ほとんどの人が自分の好きなように入浴していると思います。
しかし、その中には、医学的にあまり効果的でないものもあります。ここでは代表的なものをいくつか紹介しましょう。
1.「シャワーだけ」の入浴
仕事でクタクタに疲れて帰った日は、浴槽にお湯を張るのも面倒なものです。そんなとき、シャワーだけ浴びて、さっさと寝てしまいたくなるという気持ちはわかります。
しかし、それはあまりにももったいないこと。
「入浴の7大健康作用」のうち、シャワーにも当てはまるのは「清浄作用」のみなのです(それも、お湯に浸かるより効果は低いです)。
残念ながら、シャワーだけでは健康効果はほとんどありません。
「どうしても時間がない」「お湯を張る気力がない」というときは、足湯を取り入れることをおすすめします。
体や髪を洗うときは椅子に座り、お湯を溜めた風呂桶や洗面器に足を浸けておくようにすると、ただシャワーを浴びるよりもずっと疲れがとれやすくなります。
温度はすこし熱めの43℃くらいに。さらに炭酸系の入浴剤を入れると、より体が温まり血液の流れもよくなります。疲労回復には、血液の流れをよくして体に溜まった疲労物質の排出を促すのが一番。時間がないときは、足湯が効果的です。
2.半身浴
かつて半身浴がブームになったことがありましたが、「半身浴ならでは」という特筆すべき健康効果はありません。基本的には全身浴をおすすめします。
そもそも、半身浴では入浴にとって重要な「温熱作用」の効果が半減してしまいます。しっかりと全身でお湯に浸かったほうが体は温まり、血流もよくなります。「静水圧作用」も全身浴のほうが強くはたらきます。下半身に、より大きな水圧をかけることで、むくみの解消につながります。
また、半身浴は水面下にある体の体積も小さくなるので、浮力作用も小さくなります。つまり、半身浴は、文字通り、すべての入浴効果が全身浴の半分になるのです。
肩こりなどの痛みにも、半身浴より全身浴のほうが効果的という研究結果もあります。
ただし、本を読むなど、風呂場でのんびり過ごしたいという方もいるかと思います。その場合は、のぼせにくく、体への負荷も低い半身浴がよいでしょう。
また、全身浴で息苦しく感じる場合や、心臓や肺に疾患のある方の場合は、全身浴では負荷が高い可能性もありますので、半身浴がよいことがあります。入浴法は医師と相談することをおすすめします。