日本は高齢者向けの商品やサービスが皆無

お金があるなら、ドーンとぜいたくに使ってもよいのです。日本人の個人金融資産は約2,000兆円で、そのうちのおよそ7割を高齢者が占めていると言われています。逆に言うと、今の日本は消費不況なのですから、高齢者がお金を使わないと、日本は半永久的に景気がよくなりません。

でも「ドーンとお金を使え」と言われても、何に使ってよいかわからないという人も多いのではないでしょうか。

そうなっている理由の1つに、高齢者がお金を使いたくなるような、わくわく感のあるサービスが少ないからだと私は思っています。

ゆとりのある高齢者に人気の「ジャパネット・クルーズ」

そんな中、私が新しい試みの1つだと思ったのが、テレビ通販で有名なジャパネットたかたが始めたジャパネット・クルーズです。全室貸切の大型豪華客船で、日本各地および韓国の都市を10日間でめぐるツアーですが、船内のサービスも豪華で、食事はもちろん、さまざまな船内イベントも用意されています。

大型豪華客船によるクルーズというと、2020年にダイヤモンド・プリンセス号で、コロナの大規模クラスターが発生して以来、人気がガタ落ちになりましたが、ジャパネット・クルーズは2023年前半のツアーがほぼ予約でいっぱいだそうです(2022年9月末現在)。ツアー代金はやや高めですが、お金を持っていて、時間もたっぷりある高齢者に人気のようです。

これは一例にすぎませんが、サービスを提供する側は、もっと高齢者に寄り添ったサービスを考えるべきです。例えば、ゲームクリエーターの人は、高齢者が楽しめるようなシンプルかつ楽しいゲームを開発すべきだと思います。

また、グルメ産業だったら、高額だけど、舌の肥えた高齢者を満足させるようなフルコースディナーなども考えられるのではないでしょうか。1品の量を減らしてみたり、料理そのものだけではなく、お酒を飲んでも安心して家に帰れるように、タクシーで帰宅できるサービスを組み合わせるとか、1人暮らしの高齢者のために、一緒に食べてくれる人付きのサービスというのも考えられます。

知恵をしぼれば、高齢者を引きつける商品やサービスは、いくらでも考えられます。しかし、日本の経営者の頭の中には、「高齢者=消費者」という概念がないのか、そんな商品やサービスはほとんど生まれていません。


和田 秀樹
精神科医
ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表