一日の疲れを取るためにも、欠かせない「入浴」。入浴=健康によい、と手放しで考えがちですが、医学的観点からいうと、必ずしもそうとも限らないようです。医学博士であり、温泉療法専門医である早坂信哉氏の著書『最高の入浴法 ~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)より、実は「医学的効果のない」入浴の仕方について、詳しくみていきましょう。
「食後の入浴」の効果は医学的にも証明されているが…
3.お風呂で汗をかいて「ダイエット効果」を促進
熱いお風呂に浸かって汗をだらだらと流すと、かなりのダイエット効果があるように思うかもしれません。
しかし、結論から言うと、お風呂だけでは、あまりダイエットはできません。
確かにお風呂に長く入ると汗をかきますが、これは運動のときとは違う仕組みによります。私はお風呂でかく汗を「受け身の汗」と呼んで運動のときの汗と区別しています。運動のときは、自分の脂肪を燃焼させて体を動かし、結果として体温が上がりますので汗を出して体温を下げようとします。
一方、お風呂の場合、脂肪を燃焼させているわけではなく、お湯から熱をもらって体温が上がるのです。同じ汗でもお風呂の汗を「受け身の汗」と言うのはこの理由によります。
実際に、国が発表している身体活動の強さ(メッツ)を見ると、安静時が1とすると入浴は1.5です。散歩が3.5ですから、散歩の半分弱の強さの活動ということになります。このことからも、お風呂だけでどんどんやせる、ということにはならないでしょう。
ただし、間接的にダイエットにつながる効果もあります。
胃や腸が食べ物を消化するためには血液が必要ですが、この血液が分散してしまうと、消化がスムーズにいかないことがあります。この作用を逆手に取って利用するのです。
お湯に浸かると、体が温まり、皮膚表面に血液が分散します。そうすると、胃や腸のはたらきが抑制され、食欲を抑える効果があるのです。
また、食後に血糖値が高くなりすぎると脂肪となって体に蓄積しやすくなりますが、食後の入浴に高血糖になるのを防ぐ効果があることが以前の研究でも報告されており、この点からもダイエットにはある程度効果は期待できそうです。
ただし、もしお風呂上りに体重が0.5キロほど急に減ったとすれば、それは汗が出て脱水になったためなので、きちんと水分を摂るようにしましょう。
このように、ダイエットにお風呂が役立つ部分もありますが、それは「あっという間にやせる!」というものではありません。その点、注意が必要です。
早坂 信哉
温泉療法専門医