国民の2人に1人が罹患する「がん」は、40~50代以降に罹患率が高まっていくそうです。長寿化が進む日本において、がんは決して他人事ではありません。そこで、医師で『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)著者の勝俣範之氏が、がんを取りまく現状と、がんと告知されるまでの具体的な流れについて解説します。
“日本人の2人に1人”が経験する病…「がん」と診断されて5年後に生きている確率は?【医師が解説】
がんが“確定”するまでは「約2週間~1ヵ月」かかる
O:そもそも、どういったきっかけでがんは見つかることが多いのでしょうか?
勝俣:だいたい次の3つになります。1つめは、市町村や職場で行われているがん検診です。2つめは、痛みや出血、体調不良などの自覚症状があるために病院で診てもらったときに見つかるもの。3つめが、がん以外の病気で通院や治療をしているときに見つかるがんです。
O:そうしたことをきっかけに、がんの疑いがあるということになったら、精密検査のようなものを受けるわけですね。
勝俣:本当にがんかどうかの診断を確定するためには、診察、血液検査、画像検査、病理検査など、さまざまな検査が必要となります。検査の種類や流れについての大まかな内容は、[図表2]を参考にしてください。
がんの確定に欠かせない「病理検査」
この中でもがんの確定診断に欠かせないのが、病理検査と呼ばれる検査です。病理検査とは、がんの疑いがある部分の細胞や組織を採取して、病理医と呼ばれる専門の医師が顕微鏡などで観察して、がんかどうかを判断したり、がんの状態を判定したりするものです。
病理検査には細胞診検査と組織学的検査の2種類がありますが、現在では内視鏡などを使って組織を取って調べる組織学的検査(生検)を行い、本当にがんなのかどうかを確定するのが基本になっています。ただし、がんによっては手術をして調べなければわからないものもあります。
O:それだけいろいろな検査をするわけですから、がんだと確定診断が下されるまで、結構時間がかかるように思います。どのくらい時間がかかるものですか?
勝俣:病院にもよりますが、確定診断までは、だいたい2週間~ 1ヵ月はかかると思います。場合によっては、もっとかかるケースもあります。
O:確定診断されると、そこで検査は終わりですか。そのほかにも検査はあるのですか?
全身の画像検査でがんの「ステージ」が決まる
勝俣:もう少し、検査があります。それはがんの状況をさらに詳しく調べて、治療方針を立てるために欠かせないものなのです。
がんができた部位、大きさや深さ、がんが周囲の組織やほかの臓器に広がっていないかなどを調べるために全身の画像検査などを行います。それによって、がんの病期(ステージ)を決定します。
そのうえで、患者さんが治療を受けられる状態なのかどうかを調べるために、内臓機能の検査なども行われます。こうした検査は、病理検査の前に行われることもあります。