ここ数年、急激に高価格化が進んでいるドライヤー。値段が高くても、毎日使うものだけに違いが出ると考えられ、「高くてもその価値はある」と購入する人が多いのです。では近年の高級ドライヤーには、どのような機能が搭載されているのでしょうか。時代のニーズに合わせて進化を遂げる最新ドライヤー事情についてご紹介します。
高価格&多様化するドライヤーは“ヘアケアできる美容家電”という新境地へ (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

かつてのドライヤーが髪を傷めやすい理由

ミドル世代以上の方の中には、ドライヤーをかけすぎると髪が傷むイメージをお持ちの方も多いかもしれません。ドライヤーは髪の水分を蒸発させて乾かしていますが、その蒸発を促す2大要素となるのが熱と風。

 

髪に温風を吹きかけると髪周辺の温度が高くなり、飽和水蒸気量が多くなるため蒸発が促されます。同時に風で吹き飛ばすことで、髪周辺に湿気が留まらず、効率的に髪が乾かせるのです。

 

かつてのドライヤーは風が弱かったため、それを補うため温度を140℃などの高めに設定する傾向にありました。しかし髪は高温にさらされると髪を構成するケラチンと呼ばれるタンパク質が変性して元に戻らなくなってしまいます。

 

これが髪がダメージを受けた状態。さらに温度が高いと、「夏のお風呂上がりに髪を乾かすと再び汗をかいてしまう」といった不満の声も増えてきます。

ダメージを抑えながら速乾するという新たな価値

東京・表参道にある「パナソニックビューティー表参道」では、パナソニックの美容アイテムが試せる。同社によると男性客も多いという(筆者撮影)
東京・表参道にある「パナソニックビューティー表参道」では、パナソニックの美容アイテムが試せる。同社によると男性客も多いという(筆者撮影)

 

上記の理由から、ドライヤーの熱からヘアダメージを抑えるには、風の温度を髪が傷みにくいとされる80℃以下の低温に設定する必要があります。

 

しかし、ただ温度を下げただけでは乾燥能力が落ちてしまうため、忙しい現代人にとっては負担になります。さらに髪は濡れているとキューティクルが開きやすい状態になり、摩擦によってキューティクルが剥がれたり、髪の内側の水分や栄養分が逃げやすくなるなど、やはりヘアダメージの要因に。

 

そんな課題に立ち向かったのが、パナソニックが2005年より発売している「ナノケア」シリーズです。

 

一般的なマイナスイオンの約1000倍の水分を含むとされる「ナノイー」を発生させ、髪に潤いを与えるというもので、2022年7月時点での累計出荷台数1,500万台を突破、2012年度~2021年度の10年連続で国内出荷台数シェア1位を獲得(日本電機工業会出荷統計)するなど、ドライヤーの付加価値向上に一役買いました。

 

さらに高級ドライヤーの意義と価格を一気に押し上げたのが、2016年に登場した「Dyson Supersonicヘアドライヤー」です。

 

独自の小型ハイパワーモーターを搭載することで従来の常識を覆す風量を可能とし、低温でも速乾を実現。時短と同時に風圧によりキューティクルが整うといった訴求も受け入れられ、従来の高級ドライヤーの2倍を超える45,000円(当時)ながら業界を席巻しました。以来、各メーカーから独自の技術を搭載したドライヤーが続々登場し、高価格・高付加価値化に拍車をかけています。