気象庁の発表*1によると、今年の夏は全国的に平均気温が例年より高くなる見通しだとか。今年もまた蒸し暑いあの日々がやってくるのかと思うと、気分が滅入ってしまいそうです。そんな猛暑や汗による不快感を衣類で軽減しようと果敢に取り組んでいるのがアパレルメーカー。そこには、日本企業が得意とする繊維のテクノロジーがフル活用されているのはご存じでしょうか? 暑いからこそ着て涼しくなる、そんな猛暑対策に役立つ繊維テックの例を紹介します。
国産メーカーの技術力が結集! 猛暑をしのぐための繊維テック最新事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

不快な汗悩みに…珪藻土の多孔質構造を繊維で再現

グンゼの「アセドロン」(グンゼ提供)
グンゼの「アセドロン」(グンゼ提供)

 

梅雨時や夏場の汗によって引き起こされるベタつきや不快感の根本的解消のために開発し、今年の春夏から販売されたのがグンゼの「アセドロン」。グンゼは蚕糸業の振興を目的として1896年(明治29年)に創業された老舗インナーメーカー。その老舗が長年培った技術開発力を存分に発揮しています。

 

先立ってグンゼが行った調査によると、「実は生活者が十分に満足できるインナーは少ない」(41.9%)という結果に*2。グンゼは、夏の不快感を解決できていない大きな要因として“汗の悩み”に着目。そこで、汗によるさまざまな悩みをソリューションする新ブランドとして「アセドロン」を展開するに至りました。

 

これまでにない高い吸湿速乾性を求めるにあたり、着想したのが、最近バスマットなどにも使用されて注目を集めている、吸水力に優れた珪藻土(けいそうど)の多孔質構造。目に見えない無数の隙間が衣服内の湿気を素早く吸い込んで吐き出す構造を、長年の技術力によって繊維で再現し、より快適に進化させました。

 

生地の構造(グンゼ提供)
生地の構造(グンゼ提供)

 

ソリューションを叶える要となるその生地は、吸湿性が高くなめらかなレーヨンとドライ感の強いポリエステルの混紡によるもの。糸の芯部のレーヨンに吸放湿性を高める物質を結合させるという方法で、従来のグンゼ商品より湿気を持続的に吸放湿するのが特徴です。

 

さらに、糸の鞘部(さやぶ)には空隙をつくって水の通り道を確保し、汗を素早く効果的に拡散。「汗のベタつきを“サッ、シュッ、パッ”と瞬時に消し去る」と同時に、ベタつきを残さない、肌離れのよい着心地を実現しました。

 

「アセドロン」ブランドのアイテムは、汗悩み解決に直結するインナーのほか、足のムレ対策に最適なソックス、寝苦しい夏のおやすみ時間を快適に過ごすためのパジャマなど多岐に渡ります。

日傘効果を応用! 肌にフィットするUV・暑さ対策

ナイガイ「日傘美人」シリーズ・アームカバー(ナイガイ提供)
ナイガイ「日傘美人」シリーズ・アームカバー(ナイガイ提供)

 

暑い夏、外出時に日傘をさすと直射日光が遮られ、ささずに歩くより暑さが和らぐ感覚は、多くの人が経験したことがあるはず。その論理を応用したのが、ナイガイが今春発売した「日傘美人」シリーズです。

 

その日傘効果を実現させたのは、NEO COLD®という素材。主原料である水晶とレアメタル鉱石をブレンドした放熱パウダーをプリントした素材で、体から発生する熱を外へ逃すと同時に、太陽からの遠赤外線をブロックする機能があります。

 

同素材は、人体から発生する熱を素早く吸収し、遠赤外線にして放熱。その変換された遠赤外線は太陽光に含まれる遠赤外線遮断し、衣服内を常に快適な状態に保つという仕組みです。放熱パウダーがプリント加工されており、放熱と遮熱の機能は、洗濯してもほとんど低下せずに持続します。

 

今春夏はアームカバーやネックカバーの展開ですが、肌にフィットさせて着用することで、UVケアや接触冷感・遮熱の効果を発揮するため、さらなるアイテム拡大も期待されるところです。