気象庁の発表*1によると、今年の夏は全国的に平均気温が例年より高くなる見通しだとか。今年もまた蒸し暑いあの日々がやってくるのかと思うと、気分が滅入ってしまいそうです。そんな猛暑や汗による不快感を衣類で軽減しようと果敢に取り組んでいるのがアパレルメーカー。そこには、日本企業が得意とする繊維のテクノロジーがフル活用されているのはご存じでしょうか? 暑いからこそ着て涼しくなる、そんな猛暑対策に役立つ繊維テックの例を紹介します。
国産メーカーの技術力が結集! 猛暑をしのぐための繊維テック最新事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

髪の毛より細い繊維で速乾性を実現

ユニクロの「エアリズム」タンクトップ(ユニクロ提供)
ユニクロの「エアリズム」タンクトップ(ユニクロ提供)

 

ヒートテックと共に肌着の代名詞的存在なのが、ご存じ、ユニクロの「エアリズム」。生地に触れるとひんやり感じる、汗を吸っても乾くのが速い、といった機能を実感されている方はきっと多いと思います。

 

その「サラッと快適」な着心地を叶える秘密は、エアリズムを構成する髪の毛より細い繊維。極細繊維の毛細管現象によって、汗をすばやく吸収・拡散して速乾性を実現。また、極細繊維を均一に紡ぐことで生地表面の凸凹を少なくしてなめらかな肌触りになり、接触冷感を可能に。

 

エアリズムの仕組み(ユニクロ提供)
エアリズムの仕組み(ユニクロ提供)

 

実は、同じエアリズムでも男性用と女性用では使用されている主素材が異なります。

 

「多くの汗をかく男性用インナーは吸汗性と速乾性を備えた心地よさを」との思いでユニクロと東レが共同開発したのが、ポリエステルの極細繊維を用いた生地。その繊維の細さは、なんとヒトの髪の毛の約12分の1 。

 

極限まで細く、柔らかい繊維にすることで、なめらかで軽い着心地のインナーが実現しました。インナーを着用しない男性も多かった中、「暑い日ほど、エアリズムを一枚重ねると快適という新常識」が男性たちにも広まったのです。

 

一方、女性はブラジャーと肌着などインナーを重ねて着る事ことが多いため、衣類内温度がやや高く、ムレや汗冷えを起こしやすい傾向にあると分析。吸汗速乾性に加え、ムレを解消するために一番快適な素材を突き詰めた結果、たどり着いたのがキュプラという素材です。

 

キュプラはコットンリンター(コットンの種の周りについている産毛のような繊維)を原料とする再生繊維で、優れた吸湿性と高い水分率を保つため、しっとりと心地よく感じられるのが特徴です。

 

女性用エアリズムは、このキュプラが持つ本来の特徴を生かしながら、インナーに求められる強度や機能をおぎなうため、ナイロンを複合仮撚したユニクロ独自のキュプラが使用されています。

 

今やインナーに限らず服やキャップやアームカバーなど小物にまでアイテム拡大しているエアリズム。最近は、服の肌の間の衣服内温度を調整する機能が「屋内と屋外で気温差が大きくなる冬にも快適」と、一年を通して着用する人も増えているそうです。