日本では公的医療保険で保障され、医療機関を自由に選んで安い医療費で質の高い医療を受けることができます。健康なときにはあまり気にならないことが多いですが、治療費の支払いが家計に重くのしかかる場合もあります。たとえ高所得であっても、もしもの事態を想定していなければ、首が回らなくなることも……。本記事では、Tさんの事例とともに、公的医療保険の制度の詳細を、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
年収1,200万円の48歳・大企業部長、結婚7年目で待望の第一子を授かり、これから!というときに…〈口座残高ゼロ〉の緊急事態へ陥ったワケ「次の給料日まであと9日。もうダメだ」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

治療が長期になると医療費が重くのしかかり支払いに苦慮することも

Tさんのがんは早期の段階ではなかったため、治療効果を高くするためにまず抗がん剤による治療を行い、それから手術、手術後にも抗がん剤による治療が行われます※5。治療期間が長期になれば、毎月の医療費が気になります。Tさんの場合は年収が1,200万円ですから、高額療養費制度を活用しても、3回まで、1ヵ月25万2,600円+α円までは自己負担です。貯蓄がないのですから家計から捻出するしかありません。

 

医療費のほかに、通院に妻が付き添えないときはタクシーなどの交通費、栄養補助食品や衣料用の帽子などの支出も必要です。ついには口座残高ゼロ円という状態にまで陥り、次の給料日まであと9日、手持ちの小銭で持つかどうか、という危機に陥ります。

 

将来どんな生活を送りたいか、いつごろどんなことにお金が必要かなどを考えて、計画的に貯蓄をしていれば、治療に向き合いながらも心穏やかな毎日を過ごせていたかもしれません。Tさんは「もうダメです。いまさらですが、とても後悔しています」と涙します。

 

長女はこれから教育費かかる年齢になるでしょう。会社が配慮してくれたとしても、今後の体調や病状によっては、今の収入がずっと続くという保障はありません。妻への気遣いも必要です。いままで無計画にお金を使っていたTさん夫婦ですから、これから家計を管理していくことは、思ったより大変なことかもしれません。

 

心配事は尽きませんが、力を合わせて現時点でできることをやっていきましょう。
 

参考

※1 厚生労働省「我が国の医療保険について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

 

※2 マイナポータル「よくあるご質問 保険者とは何ですか。」

https://faq.myna.go.jp/faq/show/4894?site_domain=default

 

※3 印西市「後期高齢者医療制度の運営主体(保険者)について」

https://www.city.inzai.lg.jp/faq/faq_detail.php?frmId=100#

 

※4 厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf

 

※5 国立がん研究センター東病院「化学療法を併用した治療について」

https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/gastric_surgery/050/060/index.htm

 

 

藤原 洋子

FP dream

代表FP