現代の日本において、年金収入だけで暮らすことは簡単ではありません。そのため、再雇用やパート・アルバイトなどで「年金+α」の収入を確保することが大切です。夫を亡くして経済的な不安を抱いている専業主婦Aさんの事例から、老後の収入を確保するための方法と心構えをみていきましょう。石川亜希子AFPが解説します。
専業主婦が老後に苦労するのは“自業自得”ですか?…年金月11万円でつつましく生きる69歳女性の「静かな怒り」【FPの助言】
月11万円で暮らすAさんの「静かな怒り」
Aさん(69歳)は、5年前に夫を亡くし、都内の持ち家にひとりで住んでいます。月々の収入は国民年金と遺族年金をあわせて月に11万円※ほど。
※総務省「令和5年度家計調査報告書」によると、65歳以上の単身高齢者世帯の平均収入(年金など)は12万6,095円。
夫が遺してくれた家で、夫との思い出を大切にしながらつつましく暮らしていたAさん。しかし、修繕や家電の買い替えなど突発的な支出には貯金を切り崩すこともあり、ひとりでいることの寂しさに加えて、経済的な不安も感じていました。
「いつまで元気でいられるかわからないけれど、子どもたちには迷惑をかけたくないし、できれば貯金にも手をつけたくない……」
なんとか今からでも収入を増やす方法はないかと思いながらSNSをみていたところ、専業主婦に対して「夫がいなくなって生活に苦労するのは自業自得」といった投稿を目にしました。
たしかに働いていなかったのだから、経済的に苦労するのは仕方がないかもしれない。でも、夫とは支え合って幸せな家庭を築いてきたのに、なぜこんな見ず知らずの人にこれまでの自分の人生を否定されるようなことを言われなければいけないのか、Aさんは静かな怒りに震え、SNSを見ることも止めてしまいました。
元会社員の友人に気づかされた“ごく当たり前”のこと
久しぶりに会った友人のBさんにそんな話をしたところ、
「あら、昔は『何で働いているの?』『子どもがかわいそう』って散々言われたものよ。もちろん仕事をしていることに誇りを持ってはいたけれど、傷つくこともたくさんあったわ」
Aさんたちの世代では珍しく定年まで勤めあげた女性のBさんは、こともなげに言います。
「あっ……」そうでした、昔は「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という価値観が一般的だったのです。
「でも、あなたはいつも私を励ましてくれた。あなただって専業主婦でいることを誇りに思うべきよ。知らない人が言うことなんて気にしない、気にしない」
長年の友人であるBさんの言葉は、Aさんに深く響きました。大切な友人が自分のことを認めてくれている。そう思うと、SNSのくだらない批判を気にしていた自分がばかばかしくなってきました。