果房あたりの果数が多い! 桃の香りがするイチゴとは?
新しい果物は海外だけにあらず、日本でも多くの新品種が登場しています。たとえば、「桃薫(とうくん)」というイチゴ。モモやココナッツに似た香りや甘いカラメルのような香りの成分が多く含まれている、従来のイチゴの風味とはまったく異なる新品種(2011年10月5日品種登録)。美しいサーモンピンク(淡黄橙色)の優しい色味が特長で、短い円錐形ゆえにモモのように見えるとも言われています。
桃薫は、「とよのか」と香りの強いワイルドストロベリーFragaria nilgerrensis「雲南」を交配した「久留米IH1号」に、外観がよく栽培しやすい「カレンベリー」を掛け合わせています。魅力は味や香りだけではありません。生育が旺盛で多収である(収穫量が多い)点でも品種改良が行われた好事例と言えます。
フルーツを使用したタルトで知られる、全国に11店舗を展開するタルト専門店「キルフェボン」では、季節限定のプレミアムなタルトとして「静岡県産 “桃薫(とうくん)“のタルト」が登場し、人気を集めています。
このように、日本における高品質な果物栽培の技術は世界有数であり、輸出品目としてのポテンシャルが高いために、今後ますます期待が寄せられることでしょう。しかし、現実的には、深刻な問題も多く抱えているのです。具体的には、栽培農家も栽培面積も減少傾向に進んでいるのが実情で、人口減少に加え農業就業者の減少に歯止めがかからず、農業のなかでも重労働とされる果樹農業は大きな試練を乗り越えなければならない時代に突入していると言っても過言ではありません。
とくに高品質な果実生産は労働生産性を犠牲にして手間をかける手作業により実現されていることが多く、他品目と比較して労働時間が長いことが問題になっています。そこでこれらの問題解決のための重要なカギを握るのが、テクノロジー。ここからは国内ですでに始まっている画期的な農業システムの一例をご紹介していくことにしましょう。