※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
ロンドン発!3Dプリント技術を活用したパーソナライズなサプリメントグミ
はじめにお菓子の製造に3Dプリント技術を活用した事例をご紹介しましょう。3Dプリント技術を活用した栄養食品を提供するイギリスのスタートアップ企業「Rem3dy Health Ltd.」が作る「NOURISH3D(ナリッシュ3D)」という、見た目もコンセプトも斬新なサプリメントグミが2023年日本に上陸しました。
同社は3Dプリント技術や栄養成分のカプセル化技術において21の特許を取得。ユーザーはオンライン上で複数の設問に回答するだけで、600億通りの中から自分に合った最適なサプリメントグミが作れる仕組みになっています。また、ヴィーガン対応やアレルゲン不使用の原材料を30種類以上取り揃え、プラスチックフリーなパッケージを採用するなど、時代に合ったモノ作りも実践しています。
Rem3dy Health Ltd.は、2023年に国際貿易、イノベーション、持続可能な開発、または機会の促進に優れた英国の企業およびその他の組織を表彰するプログラム 「The King’s Awards for Enterprise」(英国女王賞)のイノベーション部門を受賞しています。
洋菓子メーカー「ユーハイム」が開発したAI搭載のバウムクーヘン専用オーブン
つづいては、お菓子作りにAIを活用し、本格的なバウムクーヘンをいつでもどこでも製造できる画期的な専用オーブンを開発したユーハイムの事例です。
1919年に日本で初めてバウムクーヘンを焼いたカール・ユーハイムから受け継がれるドイツ菓子を提供する洋菓子メーカー「ユーハイム」が、2020年にAIを搭載したバウムクーヘン専用オーブン「THEO(テオ))」を発表しました。
このオーブンを使えば、職人が焼く生地の焼き具合を各層ごとに画像センサーで解析することで、その技術をAIに機械学習させデータ化し、無人で職人と同等レベルのバウムクーヘンを焼きあげることができるようになっています。
同社では、「AIは職人の一番弟子」というコンセプトのもと、熟練の菓子職人のほか、ロボット工学の研究者、AIの専門家、デザイナーなど、多様分野の専門家のノウハウが集結し、5年がかりでテオを開発。AI搭載のねらいは、目先の業務効率化や無人化が第一優先ではありません。
ユーハイムは職人をベースとした企業であり、「良い職人が良い世の中をつくる」という考え方が基盤に。同社にとってのフードテックの意義は、テクノロジーによってフードをもっとおいしくしていくことだけでなく、クラウド上に職人の焼成データを集め「レシピバンク」としてプラットフォーム化することで菓子職人同士のネットワークを築き、さらには職人にレシピ使用料が還元される仕組みを構築するまでを想定しているそう。
レシピの著作権化を実現させることは、職人の地位向上にも貢献できると言います。
現在THEOは菓子店やカフェ、ホテルなど16カ所で稼働中。今後もますますフードテック推進を目指し、導入拡大を推進していくそうです。