歯を失った場合の3大治療にあげられる「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」。保険診療ではなく、自由診療を選ぶと治療費が嵩みますが、よりよい治療を受けられると多くの方が思われているかもしれません。しかし、自由診療にも意外な懸念点があって……。本記事では医療法人社団アスクラピア統括院長の永田浩司氏が、歯の3大治療法における保険診療と自由診療のそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
60代で28本の永久歯のうち“平均4.2本”を失う…歯の3大治療法「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の自由診療、〈治療費が高い〉以外の意外なデメリットとは【歯科医師が解説】
高価だが、噛む力をもとの歯の80%程度まで回復できるインプラント
インプラントについては自由診療のみのため、経済的な負担の大きさが賛否両論ある理由の1つでしょう。費用は1本40〜50万円が一般的で、クリニックによっては100万円を超えるところもあります。また、外科手術が必要であり、期間も3ヵ月以上かかるなど、入れ歯、ブリッジと比較すると、患者さんの負担は非常に大きいといえます。
一方でメリットは周囲の歯と違和感のない審美性に加えて、噛む力ももとの歯の80%程度まで回復することです。そして、まわりの組織を傷つけず、両隣の歯や歯茎にもやさしいため、「残存組織の温存」という観点から10年後、20年後のことまで考えると、入れ歯、ブリッジにはない大きなメリットがあるといえます。
また、部分入れ歯やブリッジと比較すると、ご自身の歯とよく似た形態をしているため、日常の手入れもラクです。ただし、歯茎は傷む可能性があるので、汚れのコントロールやメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎という歯周病に相当する病気になるリスクが高くなります。装着から5年経過すると発症率が高くなり、インプラント治療よりも費用がかかってしまいます。
インプラント治療を行えない人とは?
そのほかの注意点として、重度の糖尿病、骨粗相症の薬を長く飲まれている方、放射線治療を受けた方などは治療ができないことがあります。禁煙してから半年経っていない場合も経過が悪くなるため、治療をお断りすることがあります。
ご自身の歯が目に見えて少なくなってくる60代。入れ歯、ブリッジ、インプラント、そして保険診療、自由診療どれを選ぶにしても、作った後の専門的なチェックとサポートが、残った歯を守ることにつながります。決して有名な先生が手がけたもの、高価なものならよいわけではなく、作ったあともしっかりと伴走してもらえる先生のもとで作ることがとても大切です。
永田 浩司
医療法人社団アスクラピア 統括院長